溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
「えっと……お仕事か何か、ですか?」

 今日の業務に支障が出ないよう鎮痛剤を飲みながら聞いたら、信武(しのぶ)が「ああ」とうなずいて日和美の頭をやんわり撫でてくれて。ほんの少し肩の力が抜けた日和美(ひなみ)だ。


「なぁ。朝食の支度(したく)。くっそ簡単なもんになっけど俺にさせろ。――お前は俺が呼ぶまで寝室(あっち)で布団にくるまっとけ」

「けど――」

「腹、まだ(いて)ぇんだろ? 仕事も休む気ねぇーみてぇだしさ。家にいる時くらい俺に甘えとけ」

 信武自身も、しばらくはバタバタするみたいな宣言をしておきながら、この言いよう。
 不破(ふわ)みたいにふんわりほわほわな綿菓子的甘さではないけれど、信武も相当に彼女をダメにするゲロ甘系の男らしい。

 うー、と尚も言い募ろうとした日和美を、「素直に言うこと聞けねぇんならお姫様抱っこで寝室まで運ぶけどいいんだな?」と脅しつけてくるとか……ホント酷い。

「信武さんだって忙しくなるって言ったくせに」

 すごすごと寝室へ向かいながらもそう言わずにはいられなかった日和美だ。
 そんな日和美に信武が「バーカ。俺のはちぃーとサボりすぎたツケが回ってきただけだ。気にすんな」とニヤリとする。

 信武が記憶喪失の男性・不破として山中家にいた期間なんて十日足らずだ。
 それなのに。

 作家と言う彼の職業を思えば、締め切りなどで作業が大詰めになっているのかも知れないけれど、超過密スケジュールですね⁉︎と思わずにはいられない。
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