溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
(ちょっと前に蜜口(新刊)が出たばかりなのに。休む間もなくすぐ別のお仕事に追われちゃうなんて。売れっ子作家さんって……ホント大変なんだ)

 無意識。そんなことを思いつつ。お腹をかばうみたいに下腹部に手を当てながら寝室へ向けてトボトボと歩いていたら、背中越し。信武(しのぶ)に「こんな時に早く帰れねぇですまねぇな? マジで一人で大丈夫か?」と投げかけられる。

 大丈夫も何も、今までずっと。毎月一人で乗り越えてきた生理痛だ。
 別に今更そんなに心配されなくても平気なんだけどな?と思った日和美(ひなみ)だったけれど。

 そこでふと、昨夜信武が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたことを思い出して、ぶわりと顔が熱くなった。


***


 昨夜は風呂から上がってしばらくしたころ、湯冷めして身体を冷やしてしまったのだろうか。
 生理痛が段々酷くなってきて、日和美はソファーでお腹をかばうみたいに身体を縮こまらせて痛みに耐える羽目になった。

 そんな日和美を横に座って不機嫌そうに見下ろしていた信武が、何も言わずにふぃっと離れて行った時にはお腹の痛みも手伝って、泣きそうになって。
(こんな時こそ抱き締めてくれればいいのに)
 とか、何とも勝手なことを思ってしまった。
< 154 / 271 >

この作品をシェア

pagetop