溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
彼を気絶させた元凶とも言える重たい〝掛け〟布団を道路に丁寧に広げると、美形男性の身体をグッと押して、その上にゴロリと転がした。
敷布団と違って寸足らずな印象が否めないけれど、ここはまぁアスファルトの上に直に寝そべっているよりはマシだと思うことにする。
「よし! これで痛くない!」
などと勝手なことをつぶやいて再度彼を見下ろすと、転がしたことで仰向けになったご尊顔が、先ほどよりさらにしっかりと見えて。
「ホント現実の人じゃないみたい……」
まるでおとぎ話の挿絵から抜け出たみたいな男性に見惚れて、無意識につぶやいてほぅっと吐息混じり。
彼の上に馬乗りにでもなるかのように、顔の両サイドに腕をついて美貌を間近で観察していたら、「んっ」という声とともに目が開いて、色素薄めなブラウンアイとバッチリ目が合ってしまった。
「ひえぇっ!」
日和美が驚いて思わず奇声を発して仰け反ったら、「……キミは……誰?」と耳馴染みのいい爽やかボイスが困り顔をともなって投げ掛けられる。
高過ぎず低過ぎずなその声質は、〝爽やかな青年イケボ〟と称するのがピッタリに思えた。
「わ、私は……山中日和美です」
「日和美、さん……。……僕の名前は――」
誰かと問われたので日和美が思わず名乗ったら、眼前の彼がそれにつられて自分も名乗ろうとして。
戸惑いに揺れる泣きそうな視線を日和美に向けると、苦しそうに眉根を寄せた。
「僕は……。えっと……確か僕は――」
半身を布団の上に起こしながらそこまで言って、黙り込んでしまう。
敷布団と違って寸足らずな印象が否めないけれど、ここはまぁアスファルトの上に直に寝そべっているよりはマシだと思うことにする。
「よし! これで痛くない!」
などと勝手なことをつぶやいて再度彼を見下ろすと、転がしたことで仰向けになったご尊顔が、先ほどよりさらにしっかりと見えて。
「ホント現実の人じゃないみたい……」
まるでおとぎ話の挿絵から抜け出たみたいな男性に見惚れて、無意識につぶやいてほぅっと吐息混じり。
彼の上に馬乗りにでもなるかのように、顔の両サイドに腕をついて美貌を間近で観察していたら、「んっ」という声とともに目が開いて、色素薄めなブラウンアイとバッチリ目が合ってしまった。
「ひえぇっ!」
日和美が驚いて思わず奇声を発して仰け反ったら、「……キミは……誰?」と耳馴染みのいい爽やかボイスが困り顔をともなって投げ掛けられる。
高過ぎず低過ぎずなその声質は、〝爽やかな青年イケボ〟と称するのがピッタリに思えた。
「わ、私は……山中日和美です」
「日和美、さん……。……僕の名前は――」
誰かと問われたので日和美が思わず名乗ったら、眼前の彼がそれにつられて自分も名乗ろうとして。
戸惑いに揺れる泣きそうな視線を日和美に向けると、苦しそうに眉根を寄せた。
「僕は……。えっと……確か僕は――」
半身を布団の上に起こしながらそこまで言って、黙り込んでしまう。