溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
(17)サイン会ハプニング
 お互いに気持ちを打ち明けた日――。

 折角相思相愛だと分かったのに、絶賛生理中の日和美(ひなみ)信武(しのぶ)ががっくりと項垂(うなだ)れたのは言うまでもない。

 だが、日和美の方は、すぐすぐ信武と肌を合わせなくてもいいと言う安心感でふんわりと心が緩んだ。

 幸い生理痛ももうないし、経血量だってピークは過ぎた。
 一番の心配事だった愁いも、まだ聞きたいことはいくつか残っているものの、一応晴れた。
 そうなれば慣れたもの。
 日常生活を送るのに支障はないわけで。

 睡眠不足と栄養不足だった身体は、何とか日中は気合で仕事をこなせたものの、帰宅すると同時に一気に色々求めてきて。

 夕飯後、お風呂に入ったら余りに気持ちよくて湯船に何度か沈みそうになってしまった。

 そんなこんなで風呂上り。

 タオルを頭に乗せて二、三度手を前後に動かしただけの髪からポタポタと水滴を落としながらふらふらと眠気と戦っていたら、信武が帰宅してきた。

「おい日和美。寝るならちゃんと髪乾かしてからにしろ。風邪ひいちまうぞ」

 荷物を置いて手洗いを済ませるなり「貴方はお母さんですか」と言うセリフを並べ立てる信武に、日和美はぽやんとした視線を投げかけた。

信武(しにょぶ)しゃんのせぇれ寝不足らんれすよぅ? 責任(しぇきにん)取って(くら)しゃい」

 恨み節も語尾がふわふわと浮ついて、呂律(ろれつ)が回っていないから、全然迫力がない。

「そりゃあ悪かったな。そんなにお前が俺のこと大好きでヘロヘロになるくらい思い悩んでくれてるとは思わなかったんだ。許せ」

 ククッと楽し気に喉を鳴らして笑うと、信武が洗面所からドライヤーを手に戻って来る。
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