溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
 何が素敵って、とにかく身近にいそうな……でも実際にはそうそういないキャラ達が堪らな〝いい〟のだ。
 手が届きそうで届かない絶妙な感じが、夢見がちな乙女心を刺激して悶えさせる。

 萌風(もふ)もふ先生は、自分もいつかあんな恋をしてみたいと思わされる、そんな作品ばかりを書く作家さんだった。

 そして――。

 正直いま日和美(ひなみ)の目の前にいるふわふわさんは、萌風(もふ)先生の処女作『ユラユラたゆたう夏祭り〜金魚すくいですくったふわふわドS王子様からの濡れ濡れな溺愛が止まりません!〜』に出てきたヒーロー・アルノエル王子にそっくりで。

(まぁ、アルノエル王子は金魚の化身だから、ふわふわさんとは違うんだけどっ)

 アルノエル王子、最後は人魚姫よろしく泡になって消えてしまうキャラだ。
 ――まぁ、後になって人間の姿でヒロイン・プリシラーナの元へ戻ってくるのだけれど。

 日和美は、あのシーンでわんわん泣いたことを思い出す。

(アルノエル王子にはプリシラーナがいたけれど、〝ふわふわ王子〟は私が助けてあげなくちゃ!)

 現実世界での恋愛偏差値小学生以下レベルだからだろうか。
 日和美は、わけもなくそんな使命感にかられた。
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