溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
「あの、――【信武さん】、これ、お願いします」
聞き慣れた声に、ハッと顔を上げた信武は、目の前に【私服姿】の日和美が立っているのを認めて、思わずペンを握ったまま立ち上がっていた。
すぐさま異変に気付いた茉莉奈に、肩へ手を載せられてグッと押さえつけるようにして座らされた信武だったけれど、愛しい女性を前に心臓がバクバクするのまでは抑えられない。
そして、不測の事態に慌てたのは何も信武だけではなかったらしい。
「しの、……先生、お座り!……――ください。ファンの方が驚いておられます」
急に立ち上がった信武に、茉莉奈が何とか体裁を取り繕ったようにそう小声で諌めてきたのだが、信武にはそれが「信武、お座り!」と言うセリフにしか聞こえなかった。
肩に載せられた手指にギリリと込めらた力がそれを裏付けているように思えて仕方がない。
と――。
「あ、……えっ、うそ……、っ」
突然距離を詰めてきた茉莉奈に圧倒されたように信武の目の前。日和美がヒュッと息を詰めて口ごもったから。
信武はハッとして日和美の方を見た。
だが、案の定日和美は信武の方を見てはいなくて。
大きく見開かれた目がじっと見つめる先にいたのは茉莉奈だったから――。
信武はその顔を見て(しまった!)と思った。
「え? ……な、んで……? ねぇ、信武さん。これ、……どういうこと、……なの?」
逼迫した空気の中、日和美の困惑した声だけがやけに大きく聞こえた――。
聞き慣れた声に、ハッと顔を上げた信武は、目の前に【私服姿】の日和美が立っているのを認めて、思わずペンを握ったまま立ち上がっていた。
すぐさま異変に気付いた茉莉奈に、肩へ手を載せられてグッと押さえつけるようにして座らされた信武だったけれど、愛しい女性を前に心臓がバクバクするのまでは抑えられない。
そして、不測の事態に慌てたのは何も信武だけではなかったらしい。
「しの、……先生、お座り!……――ください。ファンの方が驚いておられます」
急に立ち上がった信武に、茉莉奈が何とか体裁を取り繕ったようにそう小声で諌めてきたのだが、信武にはそれが「信武、お座り!」と言うセリフにしか聞こえなかった。
肩に載せられた手指にギリリと込めらた力がそれを裏付けているように思えて仕方がない。
と――。
「あ、……えっ、うそ……、っ」
突然距離を詰めてきた茉莉奈に圧倒されたように信武の目の前。日和美がヒュッと息を詰めて口ごもったから。
信武はハッとして日和美の方を見た。
だが、案の定日和美は信武の方を見てはいなくて。
大きく見開かれた目がじっと見つめる先にいたのは茉莉奈だったから――。
信武はその顔を見て(しまった!)と思った。
「え? ……な、んで……? ねぇ、信武さん。これ、……どういうこと、……なの?」
逼迫した空気の中、日和美の困惑した声だけがやけに大きく聞こえた――。