溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
「その……間違っても前みたいにシャットアウトだけはしてくれるな? ……分かったな?」
それで声のトーンを低めて窺うような口調でそう懇願したら、日和美が寸の間逡巡してから。それでも「……分かりました」と言ってくれて。
信武はガラにもなく心底ホッとした。
一ファンへの対応とは明らかに違うそのやり取りの最中、茉莉奈が何も言ってこないところを見ると、彼女も目の前にいる日和美の《《正体》》を察してくれたんだろう。
決してファンの前で信武が〝俺〟と称することを許さなかったはずの茉莉奈が、黙って成り行きを見守ってくれていることがその何よりの証に思えた。
幸い日和美が最後尾に並んでいてくれたことも功を奏したに違いない。
これが、日和美の後ろにまだ別のファンが並んでいるような状況だったなら、例え相手が《《ずっと長いこと》》信武が気にかけていた女性だと気が付いていても、茉莉奈は今みたいな私的なやり取りを絶対に許さなかったはずだ。
日和美がサイン本を胸に抱えて信武を不安そうな顔で見詰めてくるから。
信武は日和美に〝大丈夫だから〟とうなずいて見せる。
書いているとき、日和美が見ていたかどうかは分からないが、いま彼女に手渡したサイン本に書き添えた『お前のことが好きだ。俺を信じろ』と言うメッセージに嘘偽りはない。
それで声のトーンを低めて窺うような口調でそう懇願したら、日和美が寸の間逡巡してから。それでも「……分かりました」と言ってくれて。
信武はガラにもなく心底ホッとした。
一ファンへの対応とは明らかに違うそのやり取りの最中、茉莉奈が何も言ってこないところを見ると、彼女も目の前にいる日和美の《《正体》》を察してくれたんだろう。
決してファンの前で信武が〝俺〟と称することを許さなかったはずの茉莉奈が、黙って成り行きを見守ってくれていることがその何よりの証に思えた。
幸い日和美が最後尾に並んでいてくれたことも功を奏したに違いない。
これが、日和美の後ろにまだ別のファンが並んでいるような状況だったなら、例え相手が《《ずっと長いこと》》信武が気にかけていた女性だと気が付いていても、茉莉奈は今みたいな私的なやり取りを絶対に許さなかったはずだ。
日和美がサイン本を胸に抱えて信武を不安そうな顔で見詰めてくるから。
信武は日和美に〝大丈夫だから〟とうなずいて見せる。
書いているとき、日和美が見ていたかどうかは分からないが、いま彼女に手渡したサイン本に書き添えた『お前のことが好きだ。俺を信じろ』と言うメッセージに嘘偽りはない。