溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
「あいつは萌風もふの影武者だ。……だって恥ずかしいだろ!? 男の俺がティーンズラブで萌えキュンなの書いてるとか」
視線を逸らせるようにした信武の耳が真っ赤になっているのを見逃さなかった日和美だ。
「立神信武は……官能作家だって異名もあるんだぞ?」
そっぽを向いたままポツンと落とされたセリフに、日和美は先日読んだ『ある茶葉店店主の淫らな劣情』や『誘いかける蜜口』の本文を思い出した。
確かにあれを書いている立神信武先生と、女性向けTLを書いている萌風もふ先生が同一人物だと言われたら、違和感しかない。
(文体だって全然違ったのに)
そのくせ、何故かとても読みやすくて懐かしいと感じたのもまた事実。
そこでふと、Webpediaに書かれていた、「立神信武は作品によってまるで別人が書いたみたいに筆致が変わる作家として有名」だという文言を思い出した日和美だ。
***
「依頼があって二十代の女性向け作品を書こうってなった時にな、さすがに立神信武のままじゃ障りがあんだろってことになって……。急遽考えたペンネームが萌風もふだ」
――愛犬ルティシアが、モフモフしていて可愛かったから。
まさかその名で長いこと二足の草鞋を履き続けることになるだなんて思わなかったから、ペンネームの由来はそんな単純で、どうでもいいものだった。
日和美が記憶喪失だった自分に、フワフワな印象を理由に不破譜和という名を与えてくれた時、何だかしっくりきた気がしたのは恐らくそう言うことだったのだ。
日が経つにつれて、失っていたはずの不破だった頃の記憶も部分的に蘇りつつある信武は、バツが悪そうな顔をしてそんなことをゴニョゴニョと付け加えて。
それを聞かされた日和美も、信武の煮え切らない物言いから、語られていることが真実なのだと少しずつ理解が追い付いてきた。
視線を逸らせるようにした信武の耳が真っ赤になっているのを見逃さなかった日和美だ。
「立神信武は……官能作家だって異名もあるんだぞ?」
そっぽを向いたままポツンと落とされたセリフに、日和美は先日読んだ『ある茶葉店店主の淫らな劣情』や『誘いかける蜜口』の本文を思い出した。
確かにあれを書いている立神信武先生と、女性向けTLを書いている萌風もふ先生が同一人物だと言われたら、違和感しかない。
(文体だって全然違ったのに)
そのくせ、何故かとても読みやすくて懐かしいと感じたのもまた事実。
そこでふと、Webpediaに書かれていた、「立神信武は作品によってまるで別人が書いたみたいに筆致が変わる作家として有名」だという文言を思い出した日和美だ。
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「依頼があって二十代の女性向け作品を書こうってなった時にな、さすがに立神信武のままじゃ障りがあんだろってことになって……。急遽考えたペンネームが萌風もふだ」
――愛犬ルティシアが、モフモフしていて可愛かったから。
まさかその名で長いこと二足の草鞋を履き続けることになるだなんて思わなかったから、ペンネームの由来はそんな単純で、どうでもいいものだった。
日和美が記憶喪失だった自分に、フワフワな印象を理由に不破譜和という名を与えてくれた時、何だかしっくりきた気がしたのは恐らくそう言うことだったのだ。
日が経つにつれて、失っていたはずの不破だった頃の記憶も部分的に蘇りつつある信武は、バツが悪そうな顔をしてそんなことをゴニョゴニョと付け加えて。
それを聞かされた日和美も、信武の煮え切らない物言いから、語られていることが真実なのだと少しずつ理解が追い付いてきた。