溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
道すがら目についた本屋へ立ち寄ったら、失踪した信武のことを探し回っていた茉莉奈にたまたま行き会った。
まぁ、その書店は信武が執筆に行き詰まった時、ちょくちょく息抜きに出向いていた場所のひとつだったので、そこで彼女と出会っても何ら不思議ではなかったのだと今なら分かる。
『信武! 今まで一体どこをほっつき歩いてたの!』
萌風の方で出す予定にしていた新作のプロットを提出しないままに姿を消していた(らしい)信武に、彼が記憶喪失だと知らなかった茉莉奈が押し付けてきたのが、玄武書院の人気レーベルのひとつ〝ムーンライトときめき濡恋文庫〟で萌風もふと双対をなしていた別の売れっ子作家が手掛けていたオフィスラブもので。
散々いなくなったことを責め立てられた後、『とりあえず!』と切羽詰まっていた仕事の話題へ切り替えられたのだ。
『信武、次に《《あっち》》で書くの、ファンタジーはやめてオフィスラブものにしてみたいって言ってたでしょう? 森野リス子先生の本、絶対参考になるから読んでみて?』
急に畳み掛けるように言われても、当時まだ六割がた不破譜和だった信武には、何のことだかさっぱり分からなくて。
『失礼ですが、貴女は《《僕》》のことをご存知なんですか? ……その、シノブというのが僕の本当の名前ですか?』
困惑顔でそう問いかけて、茉莉奈を驚かせたのを覚えている。
結局記憶喪失のまま茉莉奈に連れられてマンションへ戻ってきた信武は、ルティの遺骨が入った箱を見て、一気に立神信武としての記憶を思い出した。
同時に不破譜和だったころの記憶が曖昧になったのだけれど、茉莉奈が『今までどこにいたの?』と問いかけてきたことで荷物を色々探るに至って、写真とその裏のメモを見つけたと言うわけだ。
その日はそのままマンションで遅れていた文筆業に精を出して、茉莉奈に新作プロットを手渡してから日和美のアパートへ戻った。
まぁ、その書店は信武が執筆に行き詰まった時、ちょくちょく息抜きに出向いていた場所のひとつだったので、そこで彼女と出会っても何ら不思議ではなかったのだと今なら分かる。
『信武! 今まで一体どこをほっつき歩いてたの!』
萌風の方で出す予定にしていた新作のプロットを提出しないままに姿を消していた(らしい)信武に、彼が記憶喪失だと知らなかった茉莉奈が押し付けてきたのが、玄武書院の人気レーベルのひとつ〝ムーンライトときめき濡恋文庫〟で萌風もふと双対をなしていた別の売れっ子作家が手掛けていたオフィスラブもので。
散々いなくなったことを責め立てられた後、『とりあえず!』と切羽詰まっていた仕事の話題へ切り替えられたのだ。
『信武、次に《《あっち》》で書くの、ファンタジーはやめてオフィスラブものにしてみたいって言ってたでしょう? 森野リス子先生の本、絶対参考になるから読んでみて?』
急に畳み掛けるように言われても、当時まだ六割がた不破譜和だった信武には、何のことだかさっぱり分からなくて。
『失礼ですが、貴女は《《僕》》のことをご存知なんですか? ……その、シノブというのが僕の本当の名前ですか?』
困惑顔でそう問いかけて、茉莉奈を驚かせたのを覚えている。
結局記憶喪失のまま茉莉奈に連れられてマンションへ戻ってきた信武は、ルティの遺骨が入った箱を見て、一気に立神信武としての記憶を思い出した。
同時に不破譜和だったころの記憶が曖昧になったのだけれど、茉莉奈が『今までどこにいたの?』と問いかけてきたことで荷物を色々探るに至って、写真とその裏のメモを見つけたと言うわけだ。
その日はそのままマンションで遅れていた文筆業に精を出して、茉莉奈に新作プロットを手渡してから日和美のアパートへ戻った。