溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
 ギュッと唇を噛んだ日和美(ひなみ)が、「……ぅぇ……」と消え入りそうな声でつぶやいたら、「まぁ普通はそうなるよな」としたり顔をした信武(しのぶ)に、背中の下へ手を入れられてしまう。

「あ、あのっ! でも私の胸っ……」

 日和美は胸がないわけではないが、肉付き的にはCカップあるかないか。ややボリュームに欠けることがそこそこにコンプレックスなのだ。

 実際ブラを外してあおむけに寝そべると本当に何もなくなってしまうことを知っていたから。

 見られる前に、せめてそのことを弁明しようと必死になったのだけれど、間に合わなかった。

 日和美のそわつく心を置き去りに、いとも簡単にホックが外されてしまう。

(きゃーっ! 信武さん!! 何でそんなに手際(てぎわ)がいいのですかっ! 手練(てだ)れですか!)

 心の中で盛大に悲鳴を上げた日和美は、慌てて両手で押さえてブラを死守しようとしたのだけれど。

 薄桃色の布地は《《熟練工》》信武によって、それよりもわずかに早く、ベッド下へ落とされていた。

 やん、見えちゃう!と焦った日和美は、手ブラジャー(手ブラ)の要領で胸を覆い隠したのだけれど。
往生際(おうじょうぎわ)悪すぎだろ」
 と信武に笑われてしまった。

 きっと信武なら、力づくで胸の上に乗っかっている無粋(ぶすい)な手を取り払うことは造作(ぞうさ)もないはずなのに、どうやらそうするつもりはないらしい。

「ほら、手、どけろ」

「やだっ。だって私の胸、ちっさいもんっ」

 懸命に見せたくないと抗議する日和美に、「大きさとか関係ねぇだろ」と即座に返してきた信武は、あくまでも日和美自身の意思でそこを明け渡させたいみたいだ。

 だが、ただ待つつもりもないようで。

 胸を覆い隠した日和美の手を、指の付け根から先端に向けて、指と指の間を狙って何度も何度も執拗(しつよう)に舌を這わせて責め立ててくる。

 それはまるでその下でツンと立ち上がった乳首ごと愛撫されているような錯覚を日和美に与えて。
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