溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
「えっ。あのっ、信、武っ……これ……っ」
ベッドサイドに置かれた半月型のサイドボード上を指さして、日和美が指先を震わせる。
「ああ、それ……な」
日和美がフルフルと震える手で指し示した木製の折り畳み式フォトフレームを机上から手に取ると、信武が愛しそうに中の写真を撫でる。
片側に信武の愛犬ルティシアの写真が入れられているのは、日和美も知っていた。
けれどもう一方の写真は、信武に抱かれてこの部屋に入った情事直前には死角になっていて見えなかったのだけれど。
今、それがはっきり見えてしまって、オロオロしている真っ最中の日和美だ。
「すっげぇ可愛いだろ? ――俺がお前に一目ぼれした写真」
それは今から約三年前。
成人式の時に振袖を着て写真館で撮った、日和美のめかし込んだ写真だった。
萌風もふ先生が『犬姫』の著者近影で、和装姿を披露していたのを覚えていた日和美は、彼女のような着物の似合う大和撫子になりたいとずっと憧れていて。
成人式で振袖を着せてもらった際、妙にテンションが上がったまま「成人式でおめかしをしました!」という文言とともにファンレターに写真を同封して送ってしまったのだ。
後で冷静になってから、「なんて恥ずかしいことを!」と後悔したけれど後の祭り。
しばらくはソワソワと落ち着かない日々を過ごした日和美だったけれど、萌風もふ先生自身から何らリアクションがあるわけじゃなし。
(あれはきっと、数あるファンレターの山に紛れてスルーして頂けたんだ!)
(そもそも一ファンからの何てことのない手紙なんて、売れっ子作家の萌風先生がいちいち覚えているわけないもんね)
そう思っていた。
それなのに――。
***
「な、んでっ、信武さんがこの写真を部屋に飾ってるんですかっ」
立神信武=萌風もふだというのも、さん付けで呼ぶなと言われていたことも全て吹っ飛ばした様子で、日和美がフルフルと羞恥に身体を震わせるから。
「何でって……お前が俺にルンルンで可愛い写真、送って来たからに決まってんだろ」
「る、んるんなんかじゃ……っ」
ありません!と言い切れなくて、言葉に詰まったみたいに目元を潤ませる日和美を、信武はククッと笑いながら見遣って……。
ベッドサイドに置かれた半月型のサイドボード上を指さして、日和美が指先を震わせる。
「ああ、それ……な」
日和美がフルフルと震える手で指し示した木製の折り畳み式フォトフレームを机上から手に取ると、信武が愛しそうに中の写真を撫でる。
片側に信武の愛犬ルティシアの写真が入れられているのは、日和美も知っていた。
けれどもう一方の写真は、信武に抱かれてこの部屋に入った情事直前には死角になっていて見えなかったのだけれど。
今、それがはっきり見えてしまって、オロオロしている真っ最中の日和美だ。
「すっげぇ可愛いだろ? ――俺がお前に一目ぼれした写真」
それは今から約三年前。
成人式の時に振袖を着て写真館で撮った、日和美のめかし込んだ写真だった。
萌風もふ先生が『犬姫』の著者近影で、和装姿を披露していたのを覚えていた日和美は、彼女のような着物の似合う大和撫子になりたいとずっと憧れていて。
成人式で振袖を着せてもらった際、妙にテンションが上がったまま「成人式でおめかしをしました!」という文言とともにファンレターに写真を同封して送ってしまったのだ。
後で冷静になってから、「なんて恥ずかしいことを!」と後悔したけれど後の祭り。
しばらくはソワソワと落ち着かない日々を過ごした日和美だったけれど、萌風もふ先生自身から何らリアクションがあるわけじゃなし。
(あれはきっと、数あるファンレターの山に紛れてスルーして頂けたんだ!)
(そもそも一ファンからの何てことのない手紙なんて、売れっ子作家の萌風先生がいちいち覚えているわけないもんね)
そう思っていた。
それなのに――。
***
「な、んでっ、信武さんがこの写真を部屋に飾ってるんですかっ」
立神信武=萌風もふだというのも、さん付けで呼ぶなと言われていたことも全て吹っ飛ばした様子で、日和美がフルフルと羞恥に身体を震わせるから。
「何でって……お前が俺にルンルンで可愛い写真、送って来たからに決まってんだろ」
「る、んるんなんかじゃ……っ」
ありません!と言い切れなくて、言葉に詰まったみたいに目元を潤ませる日和美を、信武はククッと笑いながら見遣って……。