溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
その本の見本誌を茉莉奈から数冊受け取った際、信武が誰よりも一番最初に読んで欲しいと思ったのは、もちろん日和美だ。
――発売日より二週間ばかり前のフライングだが、そのくらいは関係者ということで許して欲しい。
そんなことを言って、見本で届いた一冊を日和美に渡す許可を版元社長である父と、担当編集者である茉莉奈から取り、日和美に渡せる手配を整えた信武だったのだけれど。
ほんの少し前まで自分がそうだと打ち明けられずに隠してきた萌風もふとしての本を、いざその大ファンである日和美に手渡すとなったら、やたら照れくさくなって。
「ん、コレ! 本の形になったからお前にも一冊やる。発売日はまだ二週間ほど先だからオフレコな?」
照れ隠し。
少し視線を逸らしながらぶっきら棒にサインまで入れた見本誌を日和美の前に突き出したら、日和美が「キャー! 嘘ぉーっ! 信武! 有難う!」っと黄色い声を上げて受け取ってくれた。
その上で――。
「信武っ。本当申し訳ないけど私、今から二、三日音信不通になるね! 読み終わったらファンレター持って遊びに来るから! ……それまでは絶対絶対会いに来たりしないでね!? 電話も駄目よ? 萌風先生の世界に浸るの、邪魔したら許さないんだから!」
大事そうに本を抱えた日和美から、まくし立てるようにそう告げられて、「何だよそれ!」と反論する間も与えられず即行で逃げ帰られてしまった。
(連絡もすんなって……マジか……)
立神信武としての新刊を渡しても、ここまで言われたことはなかったのに。
改めて日和美は、萌風もふ側のファンなのだと思い知らされた信武だ。
はぁーっと大きな溜め息をついたところで携帯が鳴って。
もしや日和美か?と期待して画面を見た信武だったけれど、表示されているのは市内からの着信を現す数字の羅列のみだった。
――発売日より二週間ばかり前のフライングだが、そのくらいは関係者ということで許して欲しい。
そんなことを言って、見本で届いた一冊を日和美に渡す許可を版元社長である父と、担当編集者である茉莉奈から取り、日和美に渡せる手配を整えた信武だったのだけれど。
ほんの少し前まで自分がそうだと打ち明けられずに隠してきた萌風もふとしての本を、いざその大ファンである日和美に手渡すとなったら、やたら照れくさくなって。
「ん、コレ! 本の形になったからお前にも一冊やる。発売日はまだ二週間ほど先だからオフレコな?」
照れ隠し。
少し視線を逸らしながらぶっきら棒にサインまで入れた見本誌を日和美の前に突き出したら、日和美が「キャー! 嘘ぉーっ! 信武! 有難う!」っと黄色い声を上げて受け取ってくれた。
その上で――。
「信武っ。本当申し訳ないけど私、今から二、三日音信不通になるね! 読み終わったらファンレター持って遊びに来るから! ……それまでは絶対絶対会いに来たりしないでね!? 電話も駄目よ? 萌風先生の世界に浸るの、邪魔したら許さないんだから!」
大事そうに本を抱えた日和美から、まくし立てるようにそう告げられて、「何だよそれ!」と反論する間も与えられず即行で逃げ帰られてしまった。
(連絡もすんなって……マジか……)
立神信武としての新刊を渡しても、ここまで言われたことはなかったのに。
改めて日和美は、萌風もふ側のファンなのだと思い知らされた信武だ。
はぁーっと大きな溜め息をついたところで携帯が鳴って。
もしや日和美か?と期待して画面を見た信武だったけれど、表示されているのは市内からの着信を現す数字の羅列のみだった。