溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
くのいち日和美が隣の部屋に不破を置き去りにしたまま忍び込んだ寝室は、思わず吐息が漏れてしまうほど趣味に溢れた素敵空間で。
(はぁ~。この毒々しいまでにド・ピンクの背表紙にガツン!と踊るいばらのような飾り文字が堪らないのよっ♥)
なんて壁一面を埋める本棚を前にうっとりする。
(ってそれがまずいんじゃないの!)
そう。
この一見しただけで分かるピンク色の背表紙の群れは、どう見ても妖艶でいかがわしい香りを放っていて。
とてもじゃないけれど「こう見えて全部普通の文学作品なんですぅ~♪」と言うには無理があった。
だからこそ布で覆って目隠ししてしまう予定だったのに!
日和美は不破への買い物に浮かれポンチになっていて、布を買うのをすっかり忘れてしまったのだ。
「どうしよう……」
声に出してつぶやいてみたら、ちょっとだけ気持ちが整理出来てきた。
そう。不破は紳士的な人なので、きっと日和美の許可なくこちらの部屋に入るような無粋な真似はしないに違いない。
何せ――。
(そうよ! ここは仮にもレディの寝室なのよ! 殿方が勝手に入っていいような空間じゃないわ!)
とりあえず、本棚目隠し用の布を買ってくるまでは、不破にそれとな~く、【しつこいぐらいに】「こちらの部屋には立ち入るべからず!」と申し伝えておこう。
そうすれば日和美の秘密はきっと守られるはずだ。
しかし、日和美は自分の名案(迷案?)におぼれるあまり、人間の心理についてすっかり失念していたのだ。
人は禁忌だと言われれば言われるほど、破りたくなってしまう生き物だと言う事を――。
(はぁ~。この毒々しいまでにド・ピンクの背表紙にガツン!と踊るいばらのような飾り文字が堪らないのよっ♥)
なんて壁一面を埋める本棚を前にうっとりする。
(ってそれがまずいんじゃないの!)
そう。
この一見しただけで分かるピンク色の背表紙の群れは、どう見ても妖艶でいかがわしい香りを放っていて。
とてもじゃないけれど「こう見えて全部普通の文学作品なんですぅ~♪」と言うには無理があった。
だからこそ布で覆って目隠ししてしまう予定だったのに!
日和美は不破への買い物に浮かれポンチになっていて、布を買うのをすっかり忘れてしまったのだ。
「どうしよう……」
声に出してつぶやいてみたら、ちょっとだけ気持ちが整理出来てきた。
そう。不破は紳士的な人なので、きっと日和美の許可なくこちらの部屋に入るような無粋な真似はしないに違いない。
何せ――。
(そうよ! ここは仮にもレディの寝室なのよ! 殿方が勝手に入っていいような空間じゃないわ!)
とりあえず、本棚目隠し用の布を買ってくるまでは、不破にそれとな~く、【しつこいぐらいに】「こちらの部屋には立ち入るべからず!」と申し伝えておこう。
そうすれば日和美の秘密はきっと守られるはずだ。
しかし、日和美は自分の名案(迷案?)におぼれるあまり、人間の心理についてすっかり失念していたのだ。
人は禁忌だと言われれば言われるほど、破りたくなってしまう生き物だと言う事を――。