三番線に恋がくる
「ね、ジュエキャンのジンクス知ってる?」

梓が楽しそうに身を乗り出して話す。

「ジンクス?」

「そう。ジュエキャンって基本宝石型の六角形なんだけど、たまにハートの形が入ってて、それ見つけると願い事が叶うんだって」

「へー。……まあ、よくあるやつじゃん」

スーパーで売ってるようなお菓子でもよく聞くあれだな。

「そうだけどさ。ジュエキャンの場合はマジで叶うらしいよ。インスタとかでもときどき見るし」

「ふーん……」

梓の話に相槌をうちながら、彼からもらったキャンディを確認する。
10数粒の色とりどりのキャンディたち。
みたところ全部六角形でハートの形はないように思えた。
……まあ、私にとっては彼からもらったってだけでハートの何倍もの価値があるんだけどね。


「……あ、そうだ白雪。今日、みんなで駅前で遊ぼってなってるんだけど行ける?」

「あー、…今日は駄目だ。親遅いから弟の世話しなきゃ」

「……そっか、了解。また近いうち誘うね」

「よろしく。来週は割といけるかな、って感じ」

「はいはーい。……えらいなあ、白雪。あたしなら弟とか親にキレちゃうわ」

「………別に。そんなことないよ」

そう梓に返すと同時、チャイムが鳴る。
私はキャンディを大切に鞄に仕舞った。
< 17 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop