三番線に恋がくる

☆☆☆

帰り道の電車は、いつも私一人。友達は徒歩だったり、反対方向だったり。
放課後は朝に比べ更にすいているので、大抵座席に座ってのんびりと帰っている。

電車の座席の独特の固さと熱さ。線路の揺れを更に全身で感じる。
ちょっぴり苦手なこもった匂いが眠気をさそう。

放課後の電車は、ただただ穏やか。

彼とは一度も乗り合わせたことがない。
ときどき、彼と同じ学校の制服を着ている人は見かけるけど、彼自身を見つけたことはなかった。

きっと放課後の生活リズムが違うのだろう。

私は部活をしていないので、放課後は友達と遊ぶとき以外は割と早く帰る。
今日みたいに親が仕事が忙しいときは、更に早かったりする。

……彼は?
部活をしているの?それとも塾や予備校?はたまた友達と毎日遊んでいたりする?

わからない。何も知らない。わからない。
私は彼のことを何も知らない。

それが今日はなぜかとても寂しい。

彼と会話して欲が出たのか。友達の遊ぶ約束を断った虚しさか。
今まで当たり前だったことがとても胸を苦しくさせる。
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