三番線に恋がくる
何とか朝食を終え、弟に身支度をさせ、8時前にみんな揃って家を出る。

「じゃーね、しっかり勉強しろよ」 

「ほーい」
「行ってきまーす」
「じゃあな、白雪」

「お姉ちゃんって呼べ!馬鹿ども!」

きゃいきゃい笑いながら小学校に向かう三人の背中を見送ると、自転車を爆速でこいで駅へと向かう。
急がなきゃ。急がなきゃ。

8時8分発。三番線。
あの電車に乗らないと。

「どりゃああああ!!」

駐輪場に自転車をとめ、定期を取り出しながら早足で駅構内に。改札をぬけると「三番線に○○行き、普通列車が参ります」のアナウンスが流れた。

マジでやばい。
間に合わないかも。

「いや、まだ!まだいける!」

階段をあがり、ホームへ飛び出す。
するとすでに三番線には目当ての電車が到着していた。

「ま、待って!乗る、乗ります!」

そんなこと叫んでも、朝の混雑するホームでは車掌の耳に届いてるわけはいけど。
でも。
気持ちが通じたのか、私はなんとかドアが閉まる前に滑り込むことができた。

「はーーっ」

セーフ。今日は特にギリギリセーフ。
口許に手をあて、はあはあと息を整えながら、電車内をさりげなく見回した。

小さな窓から見える、流れる景色。電線がたるんだアーチを描く。身体を揺らすカタンカタンという線路のリズム。少しだけこもったような匂い。
いつもの電車。私の通学電車だ。


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