三番線に恋がくる
近づく距離
朝。いつもの苛立ちの朝。
でも今日からは一味違う。

「……」

ベッドから起き上がった私は、まず
彼からもらったキャンディを一粒取り出す。
出てきた色はグリーン。エメラルドみたい。

「今日の目標、挨拶すること。そして、そして……名前を聞く!」

口に含むと甘い香りが広がる。コロコロと転がる音が私を応援してくれているように思えた。

☆☆☆

「……ふう、ギリギリセーフ!」

いつもの電車に乗り込み、ホッと一安心。
そしてすぐに彼の姿を見つけた。
今日は立っている。
私のいる場所から少し離れた扉近く、小さな窓から外の景色をみるように立っていた。

これは…
話しかけてもいいだろうか。
近づいてもいいのかな。

引かれない?平気?

(いや、弱気はやめると決めたじゃない)

今朝のキャンディの味を思い出す。
それだけで勇気が出るような気がした。

私はゆっくりと彼の方へと歩きだした。
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