三番線に恋がくる
「白雪ー」

ため息まじりにコーヒーを飲む私に、弟たちが話しかけてきた。

「なに?もう小学校行かなきゃ駄目なんじゃないの」

「そうだけど……その前にこれ」

「え?」

大地が私の手に何かをのせた。

それは………キャンディだった。
といっても、東条くんがくれたものとは違う。
よく駄菓子屋で売っているような、小さなキャンディが一粒。
透明な包み紙の中、ハートの形をしたキャンディが転がっていた。

「白雪、この前はごめんなさい」

大地はまっすぐ私をみて、そういった。

「え、でも、……これ、どうしたの?」

「買った。三人で。遠足のおやつを買うのを少し減らして、三人でお金を出しあった」

「白雪、最近ずっと元気ないから。きっと飴がなくなったからだと思って」

「本当は同じ飴がほしかったけど、あんな綺麗なやつ、どこにもなくて……ごめんな、白雪。いつもありがとう」

「……大地、海人、翼………。……私こそありがとう」

手の中。キャンディを握りしめる。
ハートの形。
願いを叶えてくれるハート形。
これはジュエリーキャンディではないけれど、でも同じくらい綺麗なものに思えた。
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