三番線に恋がくる
全速力で自転車をこぐ。
もう間に合わないかもしれない。
こんなギリギリは初めてだ。

でも、行かなきゃ。今、行かなきゃ。
私には願いをかなえるハートのキャンディがあるのだから。

駅につくと自転車をとめ、ついでにハートのキャンディを口に放り込む。
甘い。幼い、懐かしい甘さ。
でも、何よりもの勇気をくれる気がした。

改札をくぐろうとすると、アナウンスが聞こえる。
すでに電車が三番線に到着しているようだ。
これじゃあ、もう間に合わない。
でも、それでも走るのはやめられない。
もう逃げられないから。


あのとき、弱気になって逃げ出してしまった。
だって私と東条くんには電車の中でしか繋がりはなくて。
それはとても弱く脆いもので。
実感するのがこわかったから。

だけど本当は違った。
東条くんは言ってくれていたね。
「もう少し話したい」って。
あのとき、連絡先を交換したこと。
確かに繋がりが電車の外に広がっているしるしだったのに。
私、気づけなかった。
いや、自分の痛みに精一杯で気づきたくなかったのかもしれない。

そんなのは、もう終わりだ。


私、頑張ってるよ。
でももっともっと頑張れる。
今ならこわくない。
< 41 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop