それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「それに、畑中の方が、きっと沙帆のこと、幸せに出来ると思うんだ」
翼の言葉に、私はもう一度首を大きく横に振る。
同時に、地面に、ぽたりと私の涙が落ちた。
「いや、そうだと思うよ」
悔しいけどさ、と翼は笑う。
「沙帆が苦しんでいることに最初に気づくのは、俺じゃなくて畑中だった。きっと畑中は、俺より沙帆のこと、きちんと見ているんだよ」
「そんなことない……」
だって、翼だって、この2年少し、ずっとそばにいてくれた。
「どうして、そんなこと言うの……」
「どうしてかな……本当にそう思うからかな……。沙帆のこと、手放したくないよ。遠距離恋愛だって、乗り越えたい。でもさ、うん、やっぱり一番の理由は、畑中と出逢って、沙帆が変わったからかな」
翼が発した言葉の意味が理解出来なくて、私はただ彼を見つめ、続きの言葉を待った。
「悔しいけれど、畑中と出逢ってからの沙帆の方が、前よりもっと好きになった。なんていうのかな、なかなか言葉で伝えることは難しいんだけど……畑中と出逢って、もっと明るくなったというか……前向きになったというか……今の沙帆は、なんだか毎日楽しそうで、そばにいるだけで、なんだかすごく惹かれる。好きな気持ちが、大きくなる。この人と一緒にいたいなって思う」
翼は、もちろん前の沙帆も大好きだったけど、と笑う。
翼の笑顔を見ながら、どうしてこんな時でも笑えるんだろうと、働いていない頭でぼんやりと思った。
「ごめんな、沙帆」
頭上から降ってきた声は、さっきとは違って涙が多く混ざっていて、私は自分がきっと酷い顔をしているー涙のせいで、薄くしているメイクが落ちるどころかグチャグチャになっているはずだーことをわかりながらも翼を見上げた。
「本当は」
翼の目から、一筋の涙が頬を伝った。
「本当は、もっと前から、沙帆が好きなのは畑中なんだって、気づいていた気がする。それを認めるのが悔しくて、嫌で、辛かっただけで、本当はもうずいぶん前から気付いていた気がする……」
翼の言葉に、思わず私は声をあげて泣いた。
私は大好きだった彼を、いつから傷つけてしまっていたんだろう。
優しくて、穏やかで、いつでも私を気にかけてくれていた彼に、いつからこんな辛い思いをさせてしまっていたのだろう。
そしてどうしてそれに気づけなかったのだろう。
「翼……」
ごめん、と、言おうとした。
けれど、その言葉は、翼の為じゃなくてー…自分の罪滅ぼしの為の方が大きいような気がして、私はグッとこらえる。
嫌いだ。自分のことが、嫌い。大嫌い。
これほど自分を大切にしてくれていた人を傷つけていたなんて。
自分が憎くて、けれど今更どうしようもできないことが辛くて、いっそのこと今すぐ消えてしまいたい。
「最低だ、私……」
そう呟いた私に、翼は、「それは違う」と、否定した。
翼の言葉に、私はもう一度首を大きく横に振る。
同時に、地面に、ぽたりと私の涙が落ちた。
「いや、そうだと思うよ」
悔しいけどさ、と翼は笑う。
「沙帆が苦しんでいることに最初に気づくのは、俺じゃなくて畑中だった。きっと畑中は、俺より沙帆のこと、きちんと見ているんだよ」
「そんなことない……」
だって、翼だって、この2年少し、ずっとそばにいてくれた。
「どうして、そんなこと言うの……」
「どうしてかな……本当にそう思うからかな……。沙帆のこと、手放したくないよ。遠距離恋愛だって、乗り越えたい。でもさ、うん、やっぱり一番の理由は、畑中と出逢って、沙帆が変わったからかな」
翼が発した言葉の意味が理解出来なくて、私はただ彼を見つめ、続きの言葉を待った。
「悔しいけれど、畑中と出逢ってからの沙帆の方が、前よりもっと好きになった。なんていうのかな、なかなか言葉で伝えることは難しいんだけど……畑中と出逢って、もっと明るくなったというか……前向きになったというか……今の沙帆は、なんだか毎日楽しそうで、そばにいるだけで、なんだかすごく惹かれる。好きな気持ちが、大きくなる。この人と一緒にいたいなって思う」
翼は、もちろん前の沙帆も大好きだったけど、と笑う。
翼の笑顔を見ながら、どうしてこんな時でも笑えるんだろうと、働いていない頭でぼんやりと思った。
「ごめんな、沙帆」
頭上から降ってきた声は、さっきとは違って涙が多く混ざっていて、私は自分がきっと酷い顔をしているー涙のせいで、薄くしているメイクが落ちるどころかグチャグチャになっているはずだーことをわかりながらも翼を見上げた。
「本当は」
翼の目から、一筋の涙が頬を伝った。
「本当は、もっと前から、沙帆が好きなのは畑中なんだって、気づいていた気がする。それを認めるのが悔しくて、嫌で、辛かっただけで、本当はもうずいぶん前から気付いていた気がする……」
翼の言葉に、思わず私は声をあげて泣いた。
私は大好きだった彼を、いつから傷つけてしまっていたんだろう。
優しくて、穏やかで、いつでも私を気にかけてくれていた彼に、いつからこんな辛い思いをさせてしまっていたのだろう。
そしてどうしてそれに気づけなかったのだろう。
「翼……」
ごめん、と、言おうとした。
けれど、その言葉は、翼の為じゃなくてー…自分の罪滅ぼしの為の方が大きいような気がして、私はグッとこらえる。
嫌いだ。自分のことが、嫌い。大嫌い。
これほど自分を大切にしてくれていた人を傷つけていたなんて。
自分が憎くて、けれど今更どうしようもできないことが辛くて、いっそのこと今すぐ消えてしまいたい。
「最低だ、私……」
そう呟いた私に、翼は、「それは違う」と、否定した。