それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
二度目の春

それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

先生が学校を去ってしまってから約3か月経った、3月上旬のとある日。

卒業式も無事2週間ほど前に終えた私は、ほぼ徹夜の状態でリビングへむかった。

「……おはよう」

「うわあ、なにその酷い顔」

「……言われなくても知っているよ」

眉間にしわをよせながら私の顔を見たお母さんに、冷たく言い返す。

「昨日、寝られなかったの?」

「うん……」

正式に言うと、“寝た”けれど、“1時間しか寝られなかった”、だ。

「大丈夫よ、きっと」


お母さんは私に微笑みかけながらーかなりぎこちなく微笑みながらーパソコンを立ち上げる。

今日は、O大前期試験の合格発表の日だった。


「……緊張で吐きそう」

「……本当に吐くなら、トイレに行きなさいね?」

「……わかっているってば」

8時55分。合格発表は9時。

後、5分で、結果がわかる。

「ネット、繋がりそう?」

お母さんが、操作をしている私の横から、パソコンの画面をのぞき込む。

「今のところは繋がっているけど……ページ更新したら、エラー出そうな気がする」

「まあ、何千人もの人が、このページに集まっているだろうからね……」

お母さんの言葉に頷く。

後2分。後2分が、とてつもなく長く感じる。

「落ちていたら……後期入試に備えて勉強しないと……」

「合格発表前に、縁起でもないこと言うのはやめなさい」

お母さんが苦笑しながら、弱気の私を注意する。

「大丈夫よ、あれだけ頑張っていたんだから」

お母さんは、優しく私の背中をさすってくれた。
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