それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
9時。

「うわ、やっぱりエラーになるね」

“アクセスが集中しているため、ページを表示することが出来ません”

ページを更新すると、合格者の受験番号の代わりにエラー文言が表示される。

もう合格でも不合格でも、どちらでも良い。

それよりもこの耐えきれないほどの緊張感から解放されるために早く結果を知りたくて、エラー文言を睨みつけながら、何度も、ページ更新ボタンを押し続けた。

「5分ぐらい待てば、きちんと表示されるのかしら?」

「えっっ……後5分も……」


「「あっ!!!」」


これ以上、ドキドキする気持ちと戦うなんて、冗談でしょ……。

そうため息をつきかけた時、パソコンの画面に「O大 入学者選抜試験 合格者受験番号」という文字と共に、たくさんの数字が表示される。

「ひょ、表示された……」

緊張で思うように動かない手で必死にマウスを操作しながら、受験した外国語学部の合格者番号が書かれているページを探す。

「外国語学部、ここだ……」

すっかり覚え込んだ自分の受験番号を必死に探す。

「「あっ……!」」

私とお母さんは、同時に画面を指差す。

「「あった~~~~~!!!!」」

思わず立ち上がって、お母さんと抱きしめ合う。

「お母さん!!! あったよ、番号!!!」

見間違えじゃないかと確認するように、受験票に印字された番号とパソコンに表示された番号を再度照らし合わせる。

「うんうん、あったね……!! 頑張ったね、沙帆!!!」

お母さんが、ギュッと私を力強く抱きしめる。

「おめでとう!!!」

「ありがとう!!!」

顔を見合わせると、満面の笑みのお母さんの目には、涙が浮かんでいた。



2日後、中野先生に直接合格を伝えるために、私は学校を訪れた。

正門をくぐろうとしたとき、門の隣にあるたくさんのつぼみをつけた桜の木の中に、開花したものが混じっているのを見つける。

「そっか。もう、春だね」

スマートフォンを取り出して、綺麗なピンク色の桜の花を写真におさめる。

「うん、良いかんじ」

撮ったばかりの写真を待ち受け画面に設定すると、私は校舎へむかった。


「おお、吉川! 合格おめでとう!」

職員室へ入ると、ちょうど入り口付近のコピー機で何かの作業をしていた中野先生が、私が声をかけるよりも前に、私に気づいて話しかけてくれた。

「ありがとうございます。無事、O大、合格しました」

合格発表があった日、一応電話で合格したことは伝えていた。

けれど、中野先生には2年間、担任と言う形で“一応”お世話になったから、きちんと直接会って、お礼を伝えたかった。
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