それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
【授業中は寝るな!!】

初めて先生が書いてくれたコメント。
――先生、確かこの時、本当は私、寝ていなかったんだよ。ただ、理科があんまり好きじゃなくて、机に突っ伏していただけだったんだよ。

【朝礼の時ぐらい人の話を聞け!!】

何度も書かれた、このコメント。
――これは、素直にごめんなさい。正直、特に春頃は、朝礼も終礼もほとんど聞いていませんでした。けれど、聞いていないことに気づいてくれて、ありがとう。先生、本当に最初から、よく私のことを見ていてくれたよね。

【この問題は、〇〇の公式を使ったほうが、早く解けるぞ!】

いつも、解き方のアドバイスをくれた先生。
――先生の担当科目は理科なのに、いつも数学教えてくれてありがとう。きっと先生と出逢っていなかったら、私、数学が大嫌いなままだったと思う。先生が何度も丁寧に教えてくれたから、数学は“大嫌い”から“嫌い”になったよ。後ね、実は今年のセンター試験で、この公式を使った問題が出たんだよ。きちんと解けたよ。

【吉川が頑張っているからだよ!】

四者面談後、初めて私が書いたコメントへの返事。
――いつも私の頑張りを認めてくれて、ありがとう。先生が私のことを見ていてくれたから、認めてくれていたから、私、自分に自信持てるようになったよ。きっと先生と出逢っていなかったら、今でも私は、何もかもが面倒で、何事にもやる気が出ない、そんな生活を送っていたと思う。

【〇〇って曲、知っている? 元気が出る曲だから、勉強の休憩中にでも聞いてみて】
音楽やお菓子、本。たまにこうやって、先生のオススメを色々教えてくれた。
――この曲、何度も聞いたよ。先生がいなくなってからは、辛くて聞いていなかったけど……。今日、学校からの帰り道にでも、久しぶりに聴こうかな。


「先生と過ごした時間は、ちゃんとあったんだな……」
全てのコメントをゆっくりと読み返すと、私からは笑みがこぼれた。


「そうだよね、あったよね。だって、今、私、夢に向かって走り出せているんだから。きっとそれが、先生と過ごした時間があった、一番の証拠だよね」



【先生へ】

ノートの最後のページを開くと、カバンの中からいつも使っているシャーペンを取り出し、丁寧に書く。


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