それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「沙帆、今日泊まっていくし、この後お姉ちゃんが見てあげようか?」

「あら、それ、名案ね!」

お母さんの目がパアッと輝く。

「沙帆、見てもらいなさい」

「いや、大丈夫。今、別にわからない問題があるわけでもないし」

「けど」

「本当に大丈夫だから」

お母さんがなにか言うのを阻止するように、私は語気を強める。

なんとなく、こういう会話になりそうだってわかっていたから、お姉ちゃんと一緒にご飯をたべたくなかったんだよな。

「わからないところは学校で先生に質問もしているから大丈夫だって」

「けど、沙帆、いつもー…」

「ごちそうさまでした!」

私はまだ半分も食べていない夜ご飯を、キッチンへ運ぶ。

「ごめん、試験の話をしていたらなんか胃が痛くなっちゃって。もう食べれそうにないや」

本当は、食欲がないんじゃなくて、もうこの場にいたくないだけだけど。

そんなこと、口が裂けても言えない。

「ちょっと勉強してくるね」

私はお母さんとお姉ちゃんに背を向け、振り返ることなくリビングから去った。
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