それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「俺、お前のこと見てたから、知っている。お前が毎日丁寧に課題に取り組んでいるところも、自主的に苦手分野の復習していることも、知っている。ちゃんと頑張っていること、知っているから! だからもし、次誰かに、『お姉ちゃんは賢かったのに……』とか言われたら、俺に言えよ。お前の親だろうと、学校の先生だろうと、俺がちゃんと言い返してやるから! 『吉川だってめちゃくちゃ頑張ってるんだぞ!』って!」

本気だからな!と先生が叫ぶ。

「これからもちゃんとお前のこと、見ているから! お前が頑張っているところ、見てるから!」

「そんなに叫ばなくても聞こえているってば!」

先生の言葉がなんだか嬉しくて、けれどそれ以上に恥ずかしくて、私は叫び返す。


「先生!」

「なんだ!」

「ありがとう!!」

私の言葉に、先生はキョトン、としてから、「素直過ぎてちょっとびっくりしたわ」と笑う。

「なによ、せっかくお礼言ったのに。そんな言い方されるなら言わなきゃよかった」

「ごめんごめん、冗談だってば」

怒ったふりをする私に、先生は慌てて謝罪する。

「もういいよ、やっぱり先生なんか頼りにならない」

「ごめんってば」

近寄ってくる先生から逃げようと、また私は理科室を走り回る。

「……お前、体力ありすぎじゃね?」

もう俺、無理、という先生を私は指差して笑う。

「先生、仕事ばっかりして身体なまってるんじゃない?」

今日先生に話したから、イライラしなくなる、とか、前向きになれる、なんてことはないだろうけれど。

それでも、窓から差し込んだ太陽の光は、いつもより輝いて見えた。
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