それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「今回も、学年で三位だったじゃん。大丈夫、受かるよ」

「ありがとう、けど、まだ正直K大も迷ってるんだよな」

それに、翼が付け加える。

「沙帆がもし、こっちの大学行くなら、遠距離になるだろ」

「そっか、そうだよね……」

高校に入学してから、二年少し。

毎日べったり一緒にいるわけではないけれど、それでも、手を伸ばせば、望めば、いつでも会えた翼が遠くに行ってしまうのは、どんな感じなんだろうか。


「なんだか、想像できないね、遠距離になるの」

「沙帆は……いいの? 俺が、T大に行っても」

「……その質問は、難しいね」

新しい環境で、けれど、翼はいなくてー…。

翼が遠くに行ってしまうと、私は……寂しい?嫌?不安?

想像できる気持ちをすべて頭の中に浮かべてみたけれど、なんだかどれも、しっくりこない。

それよりもー…。

「けど、翼は、T大、行くべきなんじゃないかな」

思ったことを、正直に告げる。

「翼、ずっと持ち続けている将来の夢、あるよね。もしT大に行くことで、その夢を叶えられる可能性が高まるのなら、T大に行くべきだと思う」

出逢った時から、ずっと掲げている夢。何度も語ってくれた夢。
どうして叶えたいのか、どうして目指しているのか、翼の想いを知っているからこそ、叶えてほしいと思った。
――きっと私なんかが願うことじゃないと、わかりつつも。

「私は、翼に夢を叶えてほしいよ」

「たとえ、遠距離になっても?」

翼は、じっと私を見つめた。

「その答えは、すごく難しいけれど……それでも」

やっぱりわからない。

遠距離になる辛さも、心細さも、どういう感情になるのかも。

それでも、今の私にとって、本音なのは。

「翼に、夢を叶えてほしい。そのためなら、遠距離になっても、T大に行ってほしい」

「わかった……。沙帆の言う通りだよな」

翼は、私の考えに納得するようにゆっくりと数回頷くと、「前向きにT大も考えるよ」と告げた。
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