それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

アイスクリームの味

「――まもなくドアが閉まります。ご注意ください」

車掌さんーもしかしたら、駅員さんかもーのアナウンスに急かされるように、私は慌てて、混雑している車内から、自分の身とスーツケースを降ろす。

駅に降り立つと、少し冷房が効いた車内とは打って変わって、じめじめとした空気が、私を包み込む。

一瞬にして額に湧き出た汗を手のひらで拭ってから歩き出すと、見慣れた後ろ姿を発見した。

「美羽!」

「おはよう!」

美羽はクルッと振り向くと、いつも通り、明るい笑顔で私の呼びかけに応えた。


今日から3泊4日。

私たち高校3年生は、修学旅行で、沖縄の地を訪れることになっていた。


「やっとこの日が来たね!!」

美羽の声はいつもより上擦っていて、楽しみにしていたことが伝わってくる。

「沖縄に行けるだけでも楽しみなのに、今日から4日間は受験勉強から解放されると思うと、なんか浮かれちゃったよ」

正直な気持ちを告げた私に、美羽は「わかる」と言いながらイヒヒと笑った。

「やっぱり1番の楽しみは、自由行動の3日目かな?」

「恋にご利益のある神社に行けるから?」

「当たり前じゃん!!」

食い気味に答える美羽に、思わず私は声をあげて笑った。


“ホテルの近くに、縁結びで有名な神社があるらしい”

修学旅行の行程が発表されて、「自由行動日」があると知った次の日、
美羽は、朝、私が登校するや否や、「絶対行きたい!!」と言い張ったのだ。

「かっこよくて、身長が高くて、優しくて、賢くて、面白くて……けどクールな人と出逢えるように祈らなくちゃ」

「そんな条件揃った人、そうそういないんじゃない?」

「だから、わざわざ神様にお願いしに行くんだよう」

「なるほどねえ……だからこその神頼みか。一理あるね」

2人でけらけらと笑い合いながら、集合場所として指定されている空港の出発ターミナルへ向かった。

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