それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「吉川が、沖縄でアイス食べたいんだって」

本来注意する立場の先生が、美羽の質問に答えている姿を見て、思わず私は目をむいた。

「あ、ブルーシール? 私も食べたい!」

「なんだそれ、何のシールって?」

「え、先生、ブルーシールのこと知らずに、今まで話していたの?」

さすがにそんなことはないよね……?

そう思いながら先生を見ると、先生は私の予想に反して、キョトンとした顔で私を見つめ返した。

「先生、ブルーシール知らずに、今まで話していたの?」

さっきも同じこと聞いたな、と思いつつも、私は再度尋ねた。

「なんだ、そのブルーシールって」

「この! アイスクリームが売ってるお店! 沖縄生まれのアイスクリーム屋さんだよ!!」

「先生、知らなかったんだ~」

ククッと笑った美羽に、先生は「だって俺、沖縄初めてだもん」と、なぜか威張りながら言い返す。

「沖縄生まれのアイスクリーム屋さんか。南国のアイスクリーム屋さんって響きだけで、もう美味そうよな」

「せっかく沖縄に行くんだから、沖縄っぽいフレーバーにしたら? パイナップルとか、紅芋とか」

「お前! 何言ってんだ!!」

「ちょっと! うるさいって!」

急に隣で声量をあげた先生に驚きながら、私は睨んだ。

「俺! アイスはチョコレートって決めてるんだ! 他の味は食わない!」

「はあ? なにいってんの? チョコレート味以外にも美味しい味、いっぱいあるんだよ?」

「いや! チョコが最強だ! チョコが一番美味い!」

「そんなのー…」

「ねえ、2人とも」

美羽が振向く。

「先生も沙帆も、声大きいよ。中野に睨まれちゃうよ」

「ごめん、ありがと、教えてくれて」

「沙帆って、先生と一緒にいる時、精神年齢10歳ぐらい下がるよね」

「うわ、お前、それ小学校低学年じゃん」

横から先生がからかう。

「うるさいなあ、もう。先生なんか、先生のくせに、高校生の私と言い合いするなんて、そっちこそ精神年齢低すぎなんじゃないの」

ふん、と鼻を鳴らす。

「はいはい、静かにね、中野、こっち見てるよ」

美羽の一言に、私はもう一度ギロッと先生を睨んでから、渋々言い合いをやめた。

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