それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

ツイてない

翌日、朝礼を終えて美羽と話していると、肩をポンポンと叩かれる。
視線を美羽から斜め右上に移すと、視界に入った人の顔を見て、思わず眉をひそめた。

「おはよう、吉川」

「何ですか……」

身構えながら目の前にいる人を軽く睨む。

すると睨まれた本人は、怯むどころかハハッと笑ってから、口を開いた。

「俺、畑中翔太(はたなかしょうた)。このクラスの副担任することになったから。よろしく!」

文字通りニカッと笑った畑中先生は、私に右手を差し出した。


……どうしてこんなこと、わざわざ言いに来たんだろう。

数秒だけ考えてから、返事をする。

「……知ってますけど、そんなこと」

「おお、知ってたのか!!」

畑中先生は、目を大きく見開きながら体を仰け反らせた。

「お前さあ、昨日、俺が教壇で挨拶している時、窓の外ばっかり見て一回もこっち見なかっただろ? 挨拶が終わった後も、お前だけ拍手してくれないしさー。てっきり、俺の名前も存在も知らないかと思った」

新人の俺に見向きもしないなんて酷いよなあ、と嘆いてから、先生はもう一度右手を差し出した。

「だから、これからよろしくな! 吉川!」

「……」

これは……握手をしろ、ということなのだろうか。

しなきゃいけないのかな。嫌だな。面倒だな。

そもそもわざわざこんなどうでも良いことを言いに来るなんて、この人は暇なの?

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