それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
厳かな雰囲気に包まれながらも、どこか心が落ち着く神社内をゆっくり進み、拝殿へ向かう。

お賽銭を入れて、二礼二拍をすると、私たちは手を合わせて静かに目を閉じる。

神社に来て、きちんとお参りするなんて、なんだか久しぶりだな。
何を祈ろうかな。

大きく息を吸い込むと、私は頭の中に浮かんだ願いを、そのまま素直に心の中で呟く。

志望校に合格できますように。
夢が叶いますように。

美羽がこれからも笑顔で過ごせますように。
美羽に素敵な人が現れますように。

翼の夢も叶いますように。
翼がT大に合格できますように。

そしてー…

色々お願いしすぎたかな。
それでも、全部じゃなくても、どれか、叶うといいな。

ゆっくりと目を開けて一礼をすると、拝殿から離れた。


「美羽、お待たせ」

先に拝み終えて、絵馬を見ていた美羽に呼びかける。

「終わった?」

「うん」

「しっかり拝んでいたねえ」

美羽が、私の方が早く拝み終えるなんて思わなかったよ、と笑う。


「美羽、しっかり神様にお願いした?」

「うん、十分すぎるぐらいお願いした。”理想の人が現れますように”って。
他に何もお願いしないので、これだけ叶えてください、って伝えておいた」

美羽があまりにも真剣に、必死に、言うものだから、思わず私は声をあげて笑う。

「あー、今バカにしたでしょ!」

拗ねる美羽に、「してない、してない」と否定する。

「けどその願い、きっと叶うんじゃないかな」

だって私も、祈ったから。

2人揃って祈ったんだから、きっと神様も、本気のお願いだってわかってくれるだろう。


「そうかなあ、そうだといいけど」

もう一度お願いしてこようかな、という美羽を、「大丈夫だって」と引き留める。

「沙帆は? 何お願いしたの? 長かったけど」

「……なんか気づいたら色々お願いしちゃってた」

「色々? 児玉とのこと?」

「あ、そうか! ここ、恋愛成就の神社だったね……」

今になって、恋愛のことなんて何一つお願いしなかったことに気づく。

「……私ももう一回お願いしてこようかな」

「ええ、もう一回? 沙帆こそ、あんなにじっくりとお祈りしたんだから、大丈夫でしょ」

私の心配とは裏腹に、美羽はもう一度、「きっと、ちゃんと神様に届いたよ」と明るく言い放った。
と思うから。
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