それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「学生にとって、勉強はもちろん大事だ。それは否定しないし、勉強が出来れば、将来の選択肢は増えるとも思う。特に、中学生や高校生で、『こんな人生を送りたいんだ』ってはっきり言うことが出来る子って、そんなに多くないと思うし、色々経験を積むうちに、やりたいことだって変わると思う。だから、将来の自分がどんな道でも目指せるように、勉強をすることは凄く大切だと思う。けど、それ以上に、頑張る学生を応援したいなって思って、先生になった」

「そっか」

すごくいい話を聞いたのに、気の利いたことが言えなくて、私は相槌を打つのに留まった。

「うん……まあ、理想の教師像を実現するには、まだまだ時間がかかるんだけどな」

「そうかな」

これだけは、自信を持って言える。

「私は、先生が寄り添ってくれて、何度も救われたけどな」

たった3か月だけど、何度も、先生に出逢えてよかったと、心から思えたことが何度もある。

「ありがとう」

先生は珍しく、ふざけることもなく、素直に私にお礼の言葉を告げた。

「けど、やっぱりまだまだだよ。理想の“先生”になるには」

それに、なれるかどうかも分かんないしな、と先生がつぶやく。

「珍しいね、先生が弱音を吐くなんて」

「そうか? まあ、そうか。そうかもな」

今完全にオフモードだからかな、と先生は照れくさそうに笑う。

「けどさ、きっと叶うんじゃないかな。その夢」

「どうして?」

「なんとなく、そう思っただけ」

「なんだよ、根拠なしの励ましかよ~」

先生はわざとらしく、ガクッとその場にしゃがみ込み、落ち込んだふりをする。

「ごめんごめん」

私もしゃがんで励ますフリをして、先生のおふざけに付き合ってあげる。

先生、根拠はないけどね、きっと、大丈夫だよ。

だって。

“そしてー…先生の教師人生が、明るくて楽しいものでありますように”

今日、神社で、神様に一番強くお祈りしたから、きっと神様、叶えてくれると思う。

そしてこの願いが叶うときは、先生の夢が叶っている時だと思うから。
< 47 / 125 >

この作品をシェア

pagetop