それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「だって、本当のことじゃん。いつもくだらないことしか言わないじゃん!」

「おい、くだらないことってなんだ! さっき、俺のおかげって言ってくれたじゃん!」

「あ、そうだ、じゃあ『今回だけ』じゃなくて、『たまには』が正しいのかな」

「失礼な奴だなあ!!」

先生とぎゃあぎゃあ言い合いをしていると、「沙帆、ちょっといいかな?」と翼が私の肩を叩く。

「うん、どうかした……?」

翼の声に、反射的に肩をビクッとさせる。

なんだか……、翼の声、いつもより……。

「ちょっと、2人きりで話したいんだけど」

「……わかった」

気のせいじゃない。
やっぱり、翼の声はいつもより少し冷たくて、私は困惑気味に頷いた。


「翼、どうしたの……?」

翼に連れられて屋上にやってきた私は、何も言わずに校庭を見下ろす彼の背中に、問いかけた。

「沙帆」

振返った翼は、いつも通り真っ直ぐと、けれどいつもとは全く違う、冷めた視線を私に向けた。

「ごめん、もうハッキリ言うけど」

「うん……」


「畑中と、関わらないでほしい」


予想外の翼の言葉に、私は一瞬、頭が真っ白になる。

畑中って……先生のことだよね??

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