それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

大丈夫

屋上で翼の気持ちを聞いてから1週間。

会えばそれなりに会話はするけれど、どこかギクシャクとしてしまっていてーもちろんすべて私が悪いんだけどー、私は翼と先生に対して、どう振舞えば良いのか悩んでいた。

けれど、今日は違う。
今日は、悩む余裕なんて全くないぐらい、朝から私の頭と心の中は、1つのイベントに対する憂鬱な気持ちですべてだった。

そう、今日は、大嫌いな四者面談の日。

遂に面談を30分後に控えた私は、落ち着かず教室の前をウロウロとしていた。


「はあ……。面談って、なんか嫌なんだよなあ……」

今回は、中間試験も期末試験も良い成績だったし、なにも問題行動も起こしていないし、特に怒られることも無いはず……。

相変わらず両親のことはあんまり好きじゃないし仲良しではないけれど、表面上はある程度親に従順なフリをしているし、親から先生に、なにか言いつけられることも見当たらないし……。

「それでも、なんだか嫌だなあ」

私は、面談を待つ親のために教室の前に置かれた椅子に座り込むと、頭を抱え込んだ。


「なにやってんだ??」

ふいに、なにか硬いもので、ポンと頭を叩かれ、私は反射的に顔をあげた。

「なにやってんだ? 体調でも悪いのか?」

先生は、いつも持ち歩いている手帳を片手に、心配そうに私の顔をのぞきこむ。

「はあ、先生か」

「人の顔見た瞬間、ため息つくなんて、失礼な奴だな」

「すみません、ぼーっとしてました」

「どうした? お前が素直に謝るなんて気持ち悪いな!」

本当に体調でも悪いんじゃないか?と言う先生に、「失礼なのはそっちでしょ」と睨みつけたい気持ちを抑え込んで、私は首を左右に振る。

今はとにかく、面談でマイナスになるような言動は控えたい。


「なんだ? お前が言い返してこないと、なんだか拍子抜けするなあ……」

先生は私の隣にドスッと座ると、「元気出せよ~」と私の背中を叩いた。

「元気ですよ……」

「ウソだ、なんかこの世の終わりみたいな顔しているぞ?」

「……元からこういう顔ですよ」

本当に失礼だな、と思いつつも、大人しく耐える。

「お前! もしかして」

先生はドン!と私の背中を叩いた。

「面談、緊張してるんじゃないだろうな?」

「……正解」

「えー、まじかよ~~~」

先生は大きな声を出しながら、驚いた素振りを見せた。

「どうして? 学内試験の成績もよかったし、模試の成績だって順調に伸びているだろ? むしろ褒められる場だと思わないの?」

「いやいや……中野もお母さんも、私のこと褒めるわけないじゃん」

あ、中野先生です、とすぐさま訂正すると、先生は「はいはい」と笑った。


――しまった、怒られる要素を増やしてしまったかな……。

「そんなことないと思うけどなあ」

「そんなこと、あるんですよ」

去年の四者面談を思い出す。

< 53 / 125 >

この作品をシェア

pagetop