それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「もう高校3年生なのに、この子、志望校も決めていないんですよ。それでも、『きちんと考えている』と言えますか?」
「お母さん! 私は!」
お母さんの言い方にイラッとして、先生たちが目の前にいるにも関わらずキッと睨む。
「僕もでしたよ」、先生はさっきと同じように、穏やかな笑みを浮かべた。
「志望校って、自分がなにになりたいのか、どういう大人になりたいのか、明確になるまで決められるものではないですよね。僕だって、自分がどういう人間になりたいのか見極めるまで、凄く時間がかかりました。それこそ、高校3年生の秋まで進路は決めていませんでしたし」
黙っているお母さんに、先生は優しい声で続けた。
「けれどそれって、別に悪いことじゃないと思うんです。正直、残念なことに、自分の人生なのに、『親が言ったから』とか『なんとなく』で進路を決めてしまう子も多いです。一方で、吉川さんのように、決められないのは、それだけ慎重に、自分の未来を大切に考えているからだと思います」
お母さんに向かって放った言葉なのに。
お母さんを安心させるために放った言葉なのに。
それなのにー…なぜか私は、先生の言葉に、涙が出そうになった。
「吉川」
先生は、穏やかな声で私の名前を呼ぶと、安心させるかのようにゆっくりと頷いた。
「だから、焦らなくて良い。大丈夫。今のままで、大丈夫」
先生の言葉が、ゆっくりと、私の胸の中に広がる。
そして胸の中を行き渡ると同時に、私の頬に、一筋の涙が伝った。
「お母さん! 私は!」
お母さんの言い方にイラッとして、先生たちが目の前にいるにも関わらずキッと睨む。
「僕もでしたよ」、先生はさっきと同じように、穏やかな笑みを浮かべた。
「志望校って、自分がなにになりたいのか、どういう大人になりたいのか、明確になるまで決められるものではないですよね。僕だって、自分がどういう人間になりたいのか見極めるまで、凄く時間がかかりました。それこそ、高校3年生の秋まで進路は決めていませんでしたし」
黙っているお母さんに、先生は優しい声で続けた。
「けれどそれって、別に悪いことじゃないと思うんです。正直、残念なことに、自分の人生なのに、『親が言ったから』とか『なんとなく』で進路を決めてしまう子も多いです。一方で、吉川さんのように、決められないのは、それだけ慎重に、自分の未来を大切に考えているからだと思います」
お母さんに向かって放った言葉なのに。
お母さんを安心させるために放った言葉なのに。
それなのにー…なぜか私は、先生の言葉に、涙が出そうになった。
「吉川」
先生は、穏やかな声で私の名前を呼ぶと、安心させるかのようにゆっくりと頷いた。
「だから、焦らなくて良い。大丈夫。今のままで、大丈夫」
先生の言葉が、ゆっくりと、私の胸の中に広がる。
そして胸の中を行き渡ると同時に、私の頬に、一筋の涙が伝った。