それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「いやいや」

行かないでおこうと決意を固めた矢先、いともかんたんにその決意を揺ぐきっかけになったのは、まさかの美羽の言葉だった。

「沙帆、絶対行った方が良いって」

美羽が、私の肩を叩く。

「今日、畑中先生に『花火見るの?』って聞かれてたじゃん。このまま無視してみて? 畑中だよ? 沙帆が来るまで、絶対ずっと呼び出しし続けると思うよ?」

「うっ……」

た、確かに……。
容易に想像出来てしまうのが辛い。

「ね? パッと行って、花火が始まるまでにパッと帰っておいで?」

「うぅ……」

渋っている私の背中を叩きながら、美羽は「ほら、早く」と急かす。

美羽の意見も、一理ある……。というか、きっと正しい気がする……。
行かなければ、行くまで呼ばれ続けてー…最悪、花火が見られなかったり、途中で邪魔をされたりすることも、ありそうだ。

「美羽の言う通りだわ……」

私は諦めて、職員室の方向へ足を向ける。

「ごめん、すぐに終わらせるから、先に屋上行ってて?」

私はそれだけ言い残すと、絶対に最初の花火が打ちあがるまでに屋上へたどり着こうと決心しながら、足早に職員室へ向かった。


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