それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「吉川は将来何をやりたいの?」
先生の問いかけが真っ直ぐ心に届く。
「私は」
答えようとした時、ふと思った。
今まで誰にも話したことが無かったけれどー親友の美羽にも言ったことはなかったけれどー、この瞬間を、もしかしたらずっと待っていたのかもしれない、と。
自分の夢を聞いてくれる人が現れることを、待ちわびていたのかもしれない、と。
そう思うぐらい、急に胸が高鳴った。
「客室乗務員になりたいなって、思っている」
同時に、頭上でバチバチと花火が舞い散る。
もしかしたら花火の音で聞こえなかったかもしれないな、と思ったけれど、先生は「へえ」と微笑んだ。
「CAか。だから、外国語学部志望なんだ」
「うん」
「いいじゃん、CA。お前、むいてそう」
先生は私に、期待以上の笑顔をむけてくれた。
「修学旅行の時に先生が話してくれたみたいに、なにか大きなきっかけがあったわけではないんだけど、ね」
初めて夢を受け止めてもらえたことが嬉しくて、同時に照れくさくて、私はヘヘッと笑う。
すると先生は、「お前なあ」と、少し呆れたように笑った。
「CAになりたいと思うなら、それだけでいいじゃん。夢を持つのに、大きなきっかけも、人が納得するような理由も、いらない。自分の『なりたい』と言う気持ちだけで、十分じゃん」
先生は、「もっと自信持てよ」と、私の背中を叩いた。
「それにさ、きっとお前、良いCAになると思うよ」
「そうかなあ、そもそもなれるかなあ」
「大丈夫だって!」
先生が、くしゃりと私の頭を撫でる。
「俺はどんな人がCAに向いているとか、CAになるための必要な素質とかはわかんないけどさ、もし機内にお前みたいなCAがいたら、嬉しいけどなあ」
「どうして?」
「だってお前、優しいじゃん。人を傷つけるようなことは言わないし、もし言ってしまっても、すぐに気づいて謝るじゃん」
先生の声が一段と力強くなる。
「俺に『先生失格だ』って言った時も、修学旅行の時に隣の家の子が不登校になって責任を感じているって話をした時に『先生が責任を感じるのは間違っている』って言った時も、俺が何か言う前にすぐ謝ったじゃん。常に人の気持ちを客観的に考えられるって、接客業に必要な素質だと思うし」
それに、と先生は笑った。
「なにより、お前の笑顔って、なんだか和むんだよな。だから、」
“きっとみんなに愛される、CAになれるよ”
その言葉は、ただの先生の意見で、何か根拠があるわけでもない。
それでも、私の意思を固めるには十分すぎる程の言葉だった。
「じゃあ、先生」
私は満面の笑みで、先生にお願いをした。
「私が世界中を飛ぶまで、きちんと見守っていてね」
「当たり前だ」
「その代わり、私も先生が、理想の“先生”になれるまで、見ていてあげる」
修学旅行の時に先生が漏らした夢を口にすると、先生もさっきの私と同じように、少し照れ臭そうに笑った。
「それは大変光栄でございます」
先生はおどけて、丁寧にお辞儀をする。
それから、「お互い頑張ろうな」と、拳を私に突き出した。
突き出された拳に自分の拳をコツンと合わせると同時に、夜空からは、今日一番大きい花火が降ってきた。
先生の問いかけが真っ直ぐ心に届く。
「私は」
答えようとした時、ふと思った。
今まで誰にも話したことが無かったけれどー親友の美羽にも言ったことはなかったけれどー、この瞬間を、もしかしたらずっと待っていたのかもしれない、と。
自分の夢を聞いてくれる人が現れることを、待ちわびていたのかもしれない、と。
そう思うぐらい、急に胸が高鳴った。
「客室乗務員になりたいなって、思っている」
同時に、頭上でバチバチと花火が舞い散る。
もしかしたら花火の音で聞こえなかったかもしれないな、と思ったけれど、先生は「へえ」と微笑んだ。
「CAか。だから、外国語学部志望なんだ」
「うん」
「いいじゃん、CA。お前、むいてそう」
先生は私に、期待以上の笑顔をむけてくれた。
「修学旅行の時に先生が話してくれたみたいに、なにか大きなきっかけがあったわけではないんだけど、ね」
初めて夢を受け止めてもらえたことが嬉しくて、同時に照れくさくて、私はヘヘッと笑う。
すると先生は、「お前なあ」と、少し呆れたように笑った。
「CAになりたいと思うなら、それだけでいいじゃん。夢を持つのに、大きなきっかけも、人が納得するような理由も、いらない。自分の『なりたい』と言う気持ちだけで、十分じゃん」
先生は、「もっと自信持てよ」と、私の背中を叩いた。
「それにさ、きっとお前、良いCAになると思うよ」
「そうかなあ、そもそもなれるかなあ」
「大丈夫だって!」
先生が、くしゃりと私の頭を撫でる。
「俺はどんな人がCAに向いているとか、CAになるための必要な素質とかはわかんないけどさ、もし機内にお前みたいなCAがいたら、嬉しいけどなあ」
「どうして?」
「だってお前、優しいじゃん。人を傷つけるようなことは言わないし、もし言ってしまっても、すぐに気づいて謝るじゃん」
先生の声が一段と力強くなる。
「俺に『先生失格だ』って言った時も、修学旅行の時に隣の家の子が不登校になって責任を感じているって話をした時に『先生が責任を感じるのは間違っている』って言った時も、俺が何か言う前にすぐ謝ったじゃん。常に人の気持ちを客観的に考えられるって、接客業に必要な素質だと思うし」
それに、と先生は笑った。
「なにより、お前の笑顔って、なんだか和むんだよな。だから、」
“きっとみんなに愛される、CAになれるよ”
その言葉は、ただの先生の意見で、何か根拠があるわけでもない。
それでも、私の意思を固めるには十分すぎる程の言葉だった。
「じゃあ、先生」
私は満面の笑みで、先生にお願いをした。
「私が世界中を飛ぶまで、きちんと見守っていてね」
「当たり前だ」
「その代わり、私も先生が、理想の“先生”になれるまで、見ていてあげる」
修学旅行の時に先生が漏らした夢を口にすると、先生もさっきの私と同じように、少し照れ臭そうに笑った。
「それは大変光栄でございます」
先生はおどけて、丁寧にお辞儀をする。
それから、「お互い頑張ろうな」と、拳を私に突き出した。
突き出された拳に自分の拳をコツンと合わせると同時に、夜空からは、今日一番大きい花火が降ってきた。