それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「今日、この前受けた模試の結果が返ってきたんだけど、またT大、A判定取れてさ」

これで4回連続だ、と彼は嬉しそうに笑った。

「へえ、すごいなあ。よかったね」

翼、凄いな……。ずっと、成績、維持しているんだな……。

けれど、いつもは嬉しいこの報告も、今日はなんだか胸が締め付けられた。

それは、T大で良い判定が出ることで、翼がT大を受験する決心を固めてーそして合格してー遠距離恋愛になることが現実味を帯びつつあるからなのか、それとも、自分は彼と真逆でー…志望校のランクを落とさないといけないからか……。
きっと後者だろうな、と、翼の声を聞きながらぼんやりと思った。
――ひどいけれど。

「沙帆は? 模試の結果、返ってきた?」

「あ、ううん、まだ」

思わず咄嗟に嘘をついてしまう。

嘘をついてしまったけれど、ただ今は、「どうだった?」と聞かれることの方が、正直辛かった。

「そっか、俺のクラスは今日返却されたから、明日返って来るかもな」

「……そうかも」

なんだかいつもより、声が出にくい。

私、ちゃんと、いつも通り振舞えているかな……。

「沙帆は、志望校、O大に決めた?」

翼はきっと何気なく尋ねたのだろう。だけど、今日は、この会話が、私にはしんどくて、苦に感じてしまう。
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