それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「うーん、ここにきて悩み始めちゃった。正直、何も考えず、O大って決めちゃったところがあるから……」

こんな自分、嫌だな、と思ってしまう。
平気で嘘をついてしまう自分。
翼に見栄を張る必要なんて、無いのに。

きっと「伸び悩んでいて……」と相談すると、呆れるどころか、きっと心配して、アドバイスもくれるはずなのに。

成績は伸びないし、自分の性格がひねくれていることを実感してしまうし……なんだかこのままだと底なしに落ち込んでしまいそうな気がしてー自分のことが嫌いになってしまいそうな気がしてー私は無理矢理自分の話題を終わらせた。
終わらせた。

「翼は、T大に決めたの?」

「うーん、俺もまだ、正直悩んでいるんだよな。山崎に、浪人したくないならK大にしろ、って言われていてさ」

山崎とは、翼のクラスの担任の先生だ。

「やっぱりK大の方が偏差値は少しだけ落ちるし、K大は数学の点数配分が大きいからさ。『数学が得意ならK大にしろ』って言われているんだよ」

「なるほどね……」

「けど、もう10月だからな。今月中には決めるよ。T大とK大は問題形式が全然違うから、早く決めないと対策が間に合わないし」

「そっか、そうなんだ」

私はO大を諦めたら、どこにするんだろう。
一応第二志望はS大と書いているけれど、正直S大の過去問なんて、ほとんど触れたことないや……。

「私もそろそろ、本当に志望校決めないと」

「お互い、そうだな。頑張って決めようぜ」

なかなか決めるのは難しいけれど、との言葉に、私は電話越しに大きくうなずく。

「そういえば来週、体育祭じゃん。沙帆は何に出るの?」

他愛もない会話をしながら、私はベッドに寝ころぶ。

カーテンの隙間から見えた空は、曇っているのか星一つなくて真っ暗で、まるで自分の心のようだと思った。

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