それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「ごめんごめん」
「本当に反省しろよな。お前にまで頼りにされないのは、俺、ちょっと悲しいというか凹むんだけど」
私は笑いながら、「ごめん、次からはちゃんと相談するから」と返事をする。
「あ、そういえば」
私は少しニヤッとしながら「今、困りごとあるよ」と、先生を見る。
「私、特定の人から、雑用係押し付けられているんだよね」
「……へえ、そうか。そんなひどいことする人、いるんだな」
絶対わかっているはずなのに、「誰だろう」と悩む素振りを見せた。
「ひどいよね、もうやめてくれるかなあ?」
「どうだろう。けどやっぱり、雑用押し付けられているってことは、頼りにされているってことでもあると思うし、これからも続けてあげれば? ほら、情けは人の為ならず、とも言うし」
先生は先程の私に対抗するように、ニヤッと笑い返した。
「せっかく相談したのに、意味なかったかな」
「まあ、いくら親切で優しい俺でも、困りごとすべてを解決してあげられるわけじゃないからな」
先生はいつも通り軽口をたたくと、「ほら、そろそろ戻るぞ」と告げる。
「あれ? 用事は? 用事があったから校舎に来たんじゃないの?」
「あ、そうだったけ。まあ、いいや」
「なにそれ」
あ、そうか、そういうことか。
「ありがとうね、先生。気にしてくれて」
「うん、まあ、用事ついでだったし。用事、忘れちゃったけど」
「はいはい」
きっと用事なんてなかったんだろう。
ただ、私の様子が変なことに気づいて、話を聞くために、ここまで連れてきてくれたんだろうな。
「なんだか、悩んでいたのが馬鹿らしくなっちゃった。私、頑張るよ。O大目指す。悩んでいる時間すら、もうないもん。とりあえず諦めがつくまでは、頑張ってみるよ」
「そうそう。その意気。とりあえず頑張れ」
「うん」
私は大きくうなずくと、空を見上げて深呼吸をした。
「やっぱり私も、幸せ者かも」
花火大会の時も思ったけれど、私だって、悩んだ時、気づいて声をかけてくれる人がそばにいる。
「そうだな」
先生は、笑いながらうなずいた。
先生と2人で来た道を戻る。
数分前とは打って変わって私の心は軽くて前向きで、それは、いかに先生と話した時間が、悩み続けていた自分にとって有益で大切だったのか思い知らせた。
けれど、だから、気づけなかった。
私と先生が話す様子を、ずっと見聞きしていた人がいることに。
「本当に反省しろよな。お前にまで頼りにされないのは、俺、ちょっと悲しいというか凹むんだけど」
私は笑いながら、「ごめん、次からはちゃんと相談するから」と返事をする。
「あ、そういえば」
私は少しニヤッとしながら「今、困りごとあるよ」と、先生を見る。
「私、特定の人から、雑用係押し付けられているんだよね」
「……へえ、そうか。そんなひどいことする人、いるんだな」
絶対わかっているはずなのに、「誰だろう」と悩む素振りを見せた。
「ひどいよね、もうやめてくれるかなあ?」
「どうだろう。けどやっぱり、雑用押し付けられているってことは、頼りにされているってことでもあると思うし、これからも続けてあげれば? ほら、情けは人の為ならず、とも言うし」
先生は先程の私に対抗するように、ニヤッと笑い返した。
「せっかく相談したのに、意味なかったかな」
「まあ、いくら親切で優しい俺でも、困りごとすべてを解決してあげられるわけじゃないからな」
先生はいつも通り軽口をたたくと、「ほら、そろそろ戻るぞ」と告げる。
「あれ? 用事は? 用事があったから校舎に来たんじゃないの?」
「あ、そうだったけ。まあ、いいや」
「なにそれ」
あ、そうか、そういうことか。
「ありがとうね、先生。気にしてくれて」
「うん、まあ、用事ついでだったし。用事、忘れちゃったけど」
「はいはい」
きっと用事なんてなかったんだろう。
ただ、私の様子が変なことに気づいて、話を聞くために、ここまで連れてきてくれたんだろうな。
「なんだか、悩んでいたのが馬鹿らしくなっちゃった。私、頑張るよ。O大目指す。悩んでいる時間すら、もうないもん。とりあえず諦めがつくまでは、頑張ってみるよ」
「そうそう。その意気。とりあえず頑張れ」
「うん」
私は大きくうなずくと、空を見上げて深呼吸をした。
「やっぱり私も、幸せ者かも」
花火大会の時も思ったけれど、私だって、悩んだ時、気づいて声をかけてくれる人がそばにいる。
「そうだな」
先生は、笑いながらうなずいた。
先生と2人で来た道を戻る。
数分前とは打って変わって私の心は軽くて前向きで、それは、いかに先生と話した時間が、悩み続けていた自分にとって有益で大切だったのか思い知らせた。
けれど、だから、気づけなかった。
私と先生が話す様子を、ずっと見聞きしていた人がいることに。