それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「翼、不安?」
「ん? どうして?」
「元気無さそうだから……」
「そうかもな」
翼は弱々しく笑うと、私の方を向いた。
「沙帆は、O大だろ。遠距離になっちゃうな」
「そうだね……」
初めて翼から「T大へ行きたい」と告げられた時、翼と遠距離恋愛をすることなんて、なんだか想像できなかった。
けれど、それは今も同じで。
「T大へ行きたい」から「T大へ行く」に変わり、遠距離恋愛が現実になった今でも、他人事のように感じてしまう。
……さすがに翼が地元を去るときには、遠距離恋愛になることを実感するのかな。寂しいとか辛いとか、何かしら感情を得るのかな。
「寂しい?」
「へ?」
すっかり頭の中で翼との遠距離恋愛について考え込んでいた私は、素っ頓狂な声をあげながら首を傾げた。
「俺と、遠距離になるの、寂しい?」
翼は、真っ直ぐと私を見つめながら、一言一言確かめるように、はっきりと私に問う。
「もちろん……」
ここまで言いかけて、私は言葉を発するのをやめた。
“寂しいよ”
その気持ちはあるけれど、その気持ちはすぐに頭に浮かんだけれど、今、地元を離れてT大を目指すことを決めた翼に、言って良いのかな。
私たちの高校では、ほとんどの人が地元の大学へ進む。
もちろん東京の大学を受験する子もいるけれどー…T大を受けるのは、きっと翼だけだろうし。
一人で夢を掴みに行く彼に、―もしかしたら僅かかもしれないけれどー孤独と戦いながら進もうとしている彼に、地元へ残る私が、弱音を吐いて良いのかな。
寂しい。まだ実感していないけれど、それでも、「寂しいか?」と問われたら、絶対に「寂しい」。
けれどー…言ってもいいのかな
「もちろん……」
最後まで言って良いのか分からなくて、彼から視線を逸らす。
「沙帆」
名前を呼ばれ、私は顔をあげる。
すると翼は、いつも通り優しく微笑んでから、言った。
「俺のこと、ちゃんとフッてくれないかな」
「ん? どうして?」
「元気無さそうだから……」
「そうかもな」
翼は弱々しく笑うと、私の方を向いた。
「沙帆は、O大だろ。遠距離になっちゃうな」
「そうだね……」
初めて翼から「T大へ行きたい」と告げられた時、翼と遠距離恋愛をすることなんて、なんだか想像できなかった。
けれど、それは今も同じで。
「T大へ行きたい」から「T大へ行く」に変わり、遠距離恋愛が現実になった今でも、他人事のように感じてしまう。
……さすがに翼が地元を去るときには、遠距離恋愛になることを実感するのかな。寂しいとか辛いとか、何かしら感情を得るのかな。
「寂しい?」
「へ?」
すっかり頭の中で翼との遠距離恋愛について考え込んでいた私は、素っ頓狂な声をあげながら首を傾げた。
「俺と、遠距離になるの、寂しい?」
翼は、真っ直ぐと私を見つめながら、一言一言確かめるように、はっきりと私に問う。
「もちろん……」
ここまで言いかけて、私は言葉を発するのをやめた。
“寂しいよ”
その気持ちはあるけれど、その気持ちはすぐに頭に浮かんだけれど、今、地元を離れてT大を目指すことを決めた翼に、言って良いのかな。
私たちの高校では、ほとんどの人が地元の大学へ進む。
もちろん東京の大学を受験する子もいるけれどー…T大を受けるのは、きっと翼だけだろうし。
一人で夢を掴みに行く彼に、―もしかしたら僅かかもしれないけれどー孤独と戦いながら進もうとしている彼に、地元へ残る私が、弱音を吐いて良いのかな。
寂しい。まだ実感していないけれど、それでも、「寂しいか?」と問われたら、絶対に「寂しい」。
けれどー…言ってもいいのかな
「もちろん……」
最後まで言って良いのか分からなくて、彼から視線を逸らす。
「沙帆」
名前を呼ばれ、私は顔をあげる。
すると翼は、いつも通り優しく微笑んでから、言った。
「俺のこと、ちゃんとフッてくれないかな」