夜桜
「ごちそうさまでした。」

朝食を食べ終え、私は自室に戻った。
沖田さんから頂いた袋を取り出して、それを手に出した。

中には色とりどりの砂糖菓子が入っていた。 一粒を口に運ぶ。

「…美味しい。」

初めて食べた砂糖菓子に思わず目を丸くした。

「誠守さん!」

機会よく沖田さんの声がしたかと思えば、勢いよく襖が開いた。

「あ!金平糖!食べていただけましたか?美味しいでしょう?」

「はい!まだまだ沢山あるので、大事に食べていこうと思います。 沖田さん、ありがとうございました。」

沖田さんは微笑み、 私の部屋に入った。

「どうかなさいましたか?」

「ちょっと隠れさせてください。」

襖を閉めて、息を殺す沖田さんに疑問を感じた。

「総司〜何処〜?」

小さい男の子の声が聞こえたかと思えば、 沖田さんはくすくすと笑った。

「佐助、こっち来てみろ。」

源さんの声がしたかと思えば、
襖が勢いよく開いた。

「あー!総司見つけた!!」

指を指して喜ぶ男の子・・・佐助君を、源さんが抱き上げた。

「見つかっちゃった。それにしても源さん酷いですよ!僕の居場所を教えるなんて!」

源さんは佐助君を肩車して沖田さんに言った。

「すまないが私も鬼だ。こいつと連携組んで探してたんだよ。」

「えー!源さんも鬼だったんですか!?」

「総司、もしここが戦場だったら死んでいるぞ。」

「うう…。」

眉をひそめて悔しそうにする沖田さんの少年っぷりは面白いものだ。

源さんは、まるで佐助君の父親のようだった。

「やれやれ。誠守さんすみません。近所の子供たちとかくれんぼをしていまして。」

「いえいえ、構いませんよ。楽しそうで何よりです。」

沖田さんは部屋を後にして、源さんたちのもとへ行った。するとそこへ、沖田さんと入れ替わるように土方副長が部屋に入ってきた。

「土方副長。何かありましたか?」

「今日のことを伝えようと思ってな。今日は非番だ。羽を伸ばせ。」

「非番ということは…?」

「巡察も稽古も無い。今日一日、お前が好きなようにしろ。分かったな?」

「分かりました。お休みを下さり、ありがとうございます。」

「ああ。」

土方副長はいつもは着ない上着を着ている。それに私は疑問を抱いた。

「お出かけですか?」

「ああ。買い出しと、ちょっと見回りをな。羽織は着ないが、街の様子を少し伺おうと思ってな。」

「そうですか、行ってらっしゃいませ。」

「ああ、行ってくる。」

土方副長は私の部屋を出て、襖を閉めようとしていた。だが、動きが止まった。やがて私を見て言った。

「お前も行くか?」

「え?良いんですか?」

「ああ、俺もお前も、折角の非番だしな。 行くか?」

私は刀を腰に差して、準備は出来ていると言わんばかりに土方副長の前に立った。 土方副長は笑って、行くぞと歩いて行った。
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