夜桜
「お前には、新選組の秘密兵器となってもらう。」
土方副長の勧めで傷を警護班に手当してもらった後、私は近藤局長の部屋に呼ばれ、今後の私の所属班が決まった。
この部屋には近藤局長と土方副長、もう一人隊士がいた。 山南敬助というらしい。
組長を務めている。
「先程の素晴らしい剣さばきは見たことがない。お前には新選組の希望になってもらいたい。」
希望。
それは、彼らが私に期待してくれているも同然だった。
彼らの期待に応えるため、 私も全力を尽くして戦おうと思う。
「あの、秘密兵器とは主にどのような仕事を?」
「零番組組長だ。」
土方副長が口を開いた。
「新選組には、一番組から十番組までの部隊がある。御用改めの時はもちろん、巡察や警護日々の鍛錬などを部隊を分けて活動している。本来、零番組というのは存在しない。だが、新選組の切り札として、新選組でも剣客として名高い評価を持つ者だけの部 隊を編成し、何かあった時の希望になってもらう。お前はこの部隊の組長を務めてもらう。」
新選組内最強の部隊、その隊長。
当日にしては早すぎる出世に驚いた。
「零番組組長。拝命します。」
私は頭を下げ、その役目を仰せつかった。
「うむ、誠の旗の元、 その命をかけて戦ってくれ。これからよろしく頼む。」
近藤局長と土方副長が頭を下げた。頭を上げた土方副長は、私と目が合い、そして微笑んだ。
首には私と同じ包帯が巻かれていた。
土方副長自らつけた傷だ。
彼の勇気ある行動と、 正義感の強いその志に胸を打たれた。
そんな副長と共に人の道を歩むことになる自分を誇りに思った。
この人に私の全てを捧げたい。
「出過ぎた真似だと分かっています、ですが、私に一つ、お願い事をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
私は再び頭を下げて言った。
「なんだ?」
「私を、土方副長の小姓にしてください。」
ふと思いついたお願いを、駄目もとでお願いした。
「先程、土方副長は私に敬意を示し、個人の尊厳も押し通し、傷を作っておりました。 私は彼の正義感強い志に心を打たれました。 彼のそばで、彼と共に働きたいのです。こ の願いどうか、叶えてはいただけませんでしょうか。」
私の願い。
それは、土方副長への尊敬を意味していた。
「歳、良いか?こやつの願いを聞いてもらっても。」
「ああ、こいつは行動力もあり、剣の才能も文句無し。 そんな人間が俺の小姓になって くれるとは。 どんな願いだと思ったら。拍子抜けしてしまったじゃねえか。」
「決まりだな。 では改めて。お前に零番組組長、土方歳三の小姓。これを務めていたただく。」
「拝命します。」
許可が降り、副長のそばでの仕事が決まった今、こんなに嬉しいことはない。
全力を尽くし、この世界での新しい道を歩んでいこうと思う。
「さて。」
近藤局長の隣に座っている山南総長が口を開いた。
「彼の名はどうしましょうか。 男子たる者語る名を持たねばなりません。」
彼、どうやら私の性別は知られていないようだった。
それは私にとって、決して楽なものではないが、新選組内に女がいると知れ渡りでもすれば、隊の規律が乱れる。
ここは、今後の自分のためにも、性別を偽ることが必要だった。
「この新選組で新しく人生を送るとなれば、今から名前を与えてもいいだろう。 なあ、俺がつけてもいいか?」
「はい!もちろんです!何と言っても、私は土方副長の小姓ですもの。」
新しい人生には、新しい名前が必要だ。
その名を副長がつけてくれるとなると、この人生はとても素晴らしいものとなりそうだ。
土方副長は、部屋の落とし掛けを見た。『誠』そう書かれていた。
どうやらこの字は、 新選組の象徴らしい。
そして副長は、庭に咲いている椿の花を見た。そして私の目を見て言った。
「誠守椿。(まことのかみつばき) 誠を守ると書いて誠守だ。旋を守り、誠の道を生きる。この姓は、新選組として生きる証だ。俺の刀、和泉守という姓にも因んでいる。こいつを小姓にしたんだ。 こいつは俺の剣とする。椿という名は、庭に咲く椿が美しいこ とから。この名は、不思議な生い立ちをする儚い人生を歩んできたこいつと、椿の花を見て思った。お前が座っているそこは、背景に椿が映る。よく似合っている。」
新しい名を言われた瞬間、心が動いた。
土方副長がつけてくれた名前には、彼らしい考えを持った由来があった。
私は頭を下げ、言った。
「誠守椿と申します。この名において、決して士道に背くことは致しません。 零番組組長土方副長の小姓として、この命尽きるまで新選組と共に人生を歩んでいく所存にございます。 私を助けて下さった、貴方方への恩は忘れませぬ。」
私の新しい人生は、この名と新選組、そして土方副長と共に。
土方副長の勧めで傷を警護班に手当してもらった後、私は近藤局長の部屋に呼ばれ、今後の私の所属班が決まった。
この部屋には近藤局長と土方副長、もう一人隊士がいた。 山南敬助というらしい。
組長を務めている。
「先程の素晴らしい剣さばきは見たことがない。お前には新選組の希望になってもらいたい。」
希望。
それは、彼らが私に期待してくれているも同然だった。
彼らの期待に応えるため、 私も全力を尽くして戦おうと思う。
「あの、秘密兵器とは主にどのような仕事を?」
「零番組組長だ。」
土方副長が口を開いた。
「新選組には、一番組から十番組までの部隊がある。御用改めの時はもちろん、巡察や警護日々の鍛錬などを部隊を分けて活動している。本来、零番組というのは存在しない。だが、新選組の切り札として、新選組でも剣客として名高い評価を持つ者だけの部 隊を編成し、何かあった時の希望になってもらう。お前はこの部隊の組長を務めてもらう。」
新選組内最強の部隊、その隊長。
当日にしては早すぎる出世に驚いた。
「零番組組長。拝命します。」
私は頭を下げ、その役目を仰せつかった。
「うむ、誠の旗の元、 その命をかけて戦ってくれ。これからよろしく頼む。」
近藤局長と土方副長が頭を下げた。頭を上げた土方副長は、私と目が合い、そして微笑んだ。
首には私と同じ包帯が巻かれていた。
土方副長自らつけた傷だ。
彼の勇気ある行動と、 正義感の強いその志に胸を打たれた。
そんな副長と共に人の道を歩むことになる自分を誇りに思った。
この人に私の全てを捧げたい。
「出過ぎた真似だと分かっています、ですが、私に一つ、お願い事をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
私は再び頭を下げて言った。
「なんだ?」
「私を、土方副長の小姓にしてください。」
ふと思いついたお願いを、駄目もとでお願いした。
「先程、土方副長は私に敬意を示し、個人の尊厳も押し通し、傷を作っておりました。 私は彼の正義感強い志に心を打たれました。 彼のそばで、彼と共に働きたいのです。こ の願いどうか、叶えてはいただけませんでしょうか。」
私の願い。
それは、土方副長への尊敬を意味していた。
「歳、良いか?こやつの願いを聞いてもらっても。」
「ああ、こいつは行動力もあり、剣の才能も文句無し。 そんな人間が俺の小姓になって くれるとは。 どんな願いだと思ったら。拍子抜けしてしまったじゃねえか。」
「決まりだな。 では改めて。お前に零番組組長、土方歳三の小姓。これを務めていたただく。」
「拝命します。」
許可が降り、副長のそばでの仕事が決まった今、こんなに嬉しいことはない。
全力を尽くし、この世界での新しい道を歩んでいこうと思う。
「さて。」
近藤局長の隣に座っている山南総長が口を開いた。
「彼の名はどうしましょうか。 男子たる者語る名を持たねばなりません。」
彼、どうやら私の性別は知られていないようだった。
それは私にとって、決して楽なものではないが、新選組内に女がいると知れ渡りでもすれば、隊の規律が乱れる。
ここは、今後の自分のためにも、性別を偽ることが必要だった。
「この新選組で新しく人生を送るとなれば、今から名前を与えてもいいだろう。 なあ、俺がつけてもいいか?」
「はい!もちろんです!何と言っても、私は土方副長の小姓ですもの。」
新しい人生には、新しい名前が必要だ。
その名を副長がつけてくれるとなると、この人生はとても素晴らしいものとなりそうだ。
土方副長は、部屋の落とし掛けを見た。『誠』そう書かれていた。
どうやらこの字は、 新選組の象徴らしい。
そして副長は、庭に咲いている椿の花を見た。そして私の目を見て言った。
「誠守椿。(まことのかみつばき) 誠を守ると書いて誠守だ。旋を守り、誠の道を生きる。この姓は、新選組として生きる証だ。俺の刀、和泉守という姓にも因んでいる。こいつを小姓にしたんだ。 こいつは俺の剣とする。椿という名は、庭に咲く椿が美しいこ とから。この名は、不思議な生い立ちをする儚い人生を歩んできたこいつと、椿の花を見て思った。お前が座っているそこは、背景に椿が映る。よく似合っている。」
新しい名を言われた瞬間、心が動いた。
土方副長がつけてくれた名前には、彼らしい考えを持った由来があった。
私は頭を下げ、言った。
「誠守椿と申します。この名において、決して士道に背くことは致しません。 零番組組長土方副長の小姓として、この命尽きるまで新選組と共に人生を歩んでいく所存にございます。 私を助けて下さった、貴方方への恩は忘れませぬ。」
私の新しい人生は、この名と新選組、そして土方副長と共に。