あやかし戦記 永遠の終わり
目が見えないため、ベルフェゴールがどこから攻撃するかわからず、ただ攻撃を受け止めるしかできない。チターゼは悔しさから泣きそうになり、唇を噛み締める。

いつの間にか手から剣は滑り落ちていて、暗闇の中ただ暴力を振るわれていく。だが、しばらくするとチターゼはヴィンセント・レゴシがレオナード・ロマーナに言っていたことを思い出した。

『人は五感と呼ばれる感覚のうち、一番視覚を大切にしている。目に入ってくる情報が一番多いからね。だから視覚を失うと入ってくる情報が大幅に減る。……でも、人は五感のどれかを失うと、どこかの機能が強く発達することも珍しくないんだよ』

それを耳にした時、チターゼは特に何も思わなかった。だが視覚を奪われた今、先ほどからベルフェゴールの動く音がやけにはっきりと聞こえるのである。

(もしかして、聴覚が視覚の代わりに発達している?)

ベルフェゴールが近付いてくる音、腕を振り上げる音、足を動かす音、術を使う音、全てがチターゼに伝わっている。それに気付いた時、チターゼは笑うことができた。
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