甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「郁に話を聞いてずっとお会いしたかったのよ。一向に紹介してくれないんですもの」
「ふたりの予定と俺たちの予定がなかなか合わなかっただけだろ」
軽く眉間に皺を寄せて郁さんが返答する。
普段とは違う打ち解けた様子が新鮮だ。
「今回の件でお前の世間のイメージがずいぶん回復したと広報から報告されたぞ。いつ、結婚を発表するつもりだ?」
「その件は後日きちんと検討するよ。ふたりとも少し落ち着いて、沙也が困っている」
そう言って、私の左隣に腰を下ろした郁さんが絡めたままの左手に力を込める。
「あら、ごめんなさい。郁がやっと身を固めてくれたのが嬉しくて、つい」
「いえ、私は……」
「結婚も後継者の件も響谷の一員としてきちんと考えているよ」
既に了承している条件なのに、呆れたような彼の声音になぜか動揺する。
「それじゃ可愛い孫の姿を楽しみにしているわよ。一緒にたくさん遊びたいもの」
「それなら兄貴に会いに行けばいいだろ」
「充ちゃんは海外でしょう。そういえば郁、悠に電話していないでしょう。文句を言っていたわよ」
「メールを送ったよ。沙也、悠は兄の名で、充は兄の長男だ」
お母様に返答しながら、郁さんが私に説明してくれる。
「悠のお嫁さんのご実家が酒蔵を経営されていて、充ちゃんが継ぎたいらしいの」
「あそこの酒はうまいから、充が継いでくれるのが楽しみだな」
お父様が朗らかに口にする。
「ふたりの予定と俺たちの予定がなかなか合わなかっただけだろ」
軽く眉間に皺を寄せて郁さんが返答する。
普段とは違う打ち解けた様子が新鮮だ。
「今回の件でお前の世間のイメージがずいぶん回復したと広報から報告されたぞ。いつ、結婚を発表するつもりだ?」
「その件は後日きちんと検討するよ。ふたりとも少し落ち着いて、沙也が困っている」
そう言って、私の左隣に腰を下ろした郁さんが絡めたままの左手に力を込める。
「あら、ごめんなさい。郁がやっと身を固めてくれたのが嬉しくて、つい」
「いえ、私は……」
「結婚も後継者の件も響谷の一員としてきちんと考えているよ」
既に了承している条件なのに、呆れたような彼の声音になぜか動揺する。
「それじゃ可愛い孫の姿を楽しみにしているわよ。一緒にたくさん遊びたいもの」
「それなら兄貴に会いに行けばいいだろ」
「充ちゃんは海外でしょう。そういえば郁、悠に電話していないでしょう。文句を言っていたわよ」
「メールを送ったよ。沙也、悠は兄の名で、充は兄の長男だ」
お母様に返答しながら、郁さんが私に説明してくれる。
「悠のお嫁さんのご実家が酒蔵を経営されていて、充ちゃんが継ぎたいらしいの」
「あそこの酒はうまいから、充が継いでくれるのが楽しみだな」
お父様が朗らかに口にする。