甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「……飯野さんが腹立たしく思われる気持ちは理解できます。でも私は郁さんを大切に想っています。決して中途半端な気持ちで傍にいるわけではありません」
今の自分の気持ちを必死に伝える。
これまでの私なら対峙もせずきっと逃げていた。
どうしたら、なにが正解なのかと悩んでいただろう。
けれど今、郁さんへの想い、ともに家庭を築きたい気持ちは、誰にも負けない自信がある。
震えそうになる足を必死に踏ん張り、飯野さんを見つめ返す。
「甘いわね、好きとかそんな不確かな気持ちだけで大企業の妻が務まると思っているの? まさかあなた、郁に愛されて望まれて結婚したと本気で信じているわけ?」
「え……?」
「郁のお兄様、悠さんのご実家が有名な酒蔵だってご存知?」
「……はい」
「兄嫁の舞さんは酒蔵の跡取り娘でね、周囲の反対を押し切って悠さんと結婚したの。だから将来的に悠さんは響谷ホールディングスを郁に任せて雅子さんのご実家を手伝うつもりなのよ。自身の子どもに酒蔵を引き継がせてね」
初めて聞く話に理解が追いつかない。
飯野さんは一体なにを言いたいのか。
「本来なら長男の悠さんが副社長に就任するはずだったのよ。でも自身はいずれ会社を離れるつもりだからと、海外支社の社長になったの。後を継ぐ郁に万全の状態ですべてを引き渡せるようにね」
飯野さんは滔々と響谷ホールディングスの内情を語る。
「郁の有能ぶりは有名だったから、一族も郁が後継ぎになる将来に異論はなかったの。でも女性関係の派手な噂と郁の次の後継者については懸念があったのよ」
どこかで聞いたような話に背筋を冷たい汗が流れた。
今の自分の気持ちを必死に伝える。
これまでの私なら対峙もせずきっと逃げていた。
どうしたら、なにが正解なのかと悩んでいただろう。
けれど今、郁さんへの想い、ともに家庭を築きたい気持ちは、誰にも負けない自信がある。
震えそうになる足を必死に踏ん張り、飯野さんを見つめ返す。
「甘いわね、好きとかそんな不確かな気持ちだけで大企業の妻が務まると思っているの? まさかあなた、郁に愛されて望まれて結婚したと本気で信じているわけ?」
「え……?」
「郁のお兄様、悠さんのご実家が有名な酒蔵だってご存知?」
「……はい」
「兄嫁の舞さんは酒蔵の跡取り娘でね、周囲の反対を押し切って悠さんと結婚したの。だから将来的に悠さんは響谷ホールディングスを郁に任せて雅子さんのご実家を手伝うつもりなのよ。自身の子どもに酒蔵を引き継がせてね」
初めて聞く話に理解が追いつかない。
飯野さんは一体なにを言いたいのか。
「本来なら長男の悠さんが副社長に就任するはずだったのよ。でも自身はいずれ会社を離れるつもりだからと、海外支社の社長になったの。後を継ぐ郁に万全の状態ですべてを引き渡せるようにね」
飯野さんは滔々と響谷ホールディングスの内情を語る。
「郁の有能ぶりは有名だったから、一族も郁が後継ぎになる将来に異論はなかったの。でも女性関係の派手な噂と郁の次の後継者については懸念があったのよ」
どこかで聞いたような話に背筋を冷たい汗が流れた。