甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
あまりの過保護ぶりに驚きつつも、それほど心配をかけてしまったのかと申し訳なさがこみ上げる。

夫の優しさは嬉しいのに、心の片隅に小さな不安が巣食う。

飯野さんから聞いた衝撃的な現実をまだきちんと理解できない。

知らずにいたショックは大きいが、臆病な私は郁さんに確認できずにいる。

その一方で、飯野さんへの感謝の気持ちがこみ上げる。

もしあの場に彼女がいなかったり、万が一見捨てられでもしていたら私はどうなっていたかわからない。

飯野さんは自身ににとって疎ましい存在の私を躊躇いもせず助け、ずっと心配してくれていた。

その姿に外見はもちろんのこと、人として素敵だと、敵わないと悟った。

なぜこの人が郁さんに選ばれなかったのかと首を捻る。

飯野さんには郁さんが診察結果を電話で伝える際に礼を告げたと聞いたが、後日私からもきちんと伝えたい。

塔子や佐多くんもずいぶん心配してくれていたらしく、会社を通して郁さんが診察後に連絡してくれた。

さすがに妊娠については告げていなかったため、先ほど塔子には郁さんにひと言ことわってからメッセージで伝えた。


【おめでとう! ビックリしたけど、よかったわね。こっちは大丈夫だから気にしないで少し休んでね】


すぐさま祝福と労りのメッセージが届き、胸の奥が温かくなった。
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