甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
9.「俺だったらと願った」
日々は過ぎ、落ち葉が舞う十一月中旬を迎えた。

体調は無事に回復し、今は産休をとる日まで勤務を続けている。


『結婚発表は安定期に入ってからにしよう』


過保護で心配症な夫は、響谷の両親の意見も聞かず強引に決めた。

元々はカフェレストランのオープンパーティーでの発表予定だったが、あっさり変更してしまった。

ちなみに私の両親は妊娠をとても喜ぶと同時に、心配していた。

母が家事など手伝いに行こうかと言ってくれたが、郁さんが私の世話や家事の一切を引き受けてくれていることもあり、丁重に断った。

最近は仕事を以前にも増して早めに切り上げ、帰宅してくれている。

大丈夫だと何度言っても聞く耳を持ってくれない。


『パーティーでの発表を見送ったら、沙也さんが結婚相手について周囲に言えなくなるでしょう?』


妊娠の報告に後日響谷邸を訪れた際、改めて結婚発表について言及した郁さんに、お義母様が呆れたように口にした。


『パーティーで公式に発表せずとも、結婚についてはすぐにでも公表するつもりです。大切な妻がいつまでも職場で独身者扱いをされているのは嬉しくないので』


『……うちの息子たちは変なところで優秀すぎて嫌だわ。あなたたちは外堀を埋めすぎよ。水面下で駆け引きばかりするところは一体誰に似たのかしら』


『まあまあ、ふたりとも落ち着きなさい。沙也さんはそれで構わないのかな?』


お義父様は気遣うように私に話を振ってくださる。


『はい、私は……郁さんが納得する方法で……』
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