甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
私はやはり後継者を育むためだけの存在なの?


『妻』ではなく、すでに後継者の『母親』として私を見ている?


『好きだ』と言ってくれたのは本心じゃなかった?


過敏に捉えすぎているだけかもしれない。

それでもやはり私は飯野さんの言葉に縛られて身動きがとれずにいる。


お母さんになるのに。


しっかりしなきゃ、いけないのに。


十代の学生でもないのに、なにを怯えているの?


帰宅して、ひとり静かな部屋にいるとついつい考えすぎて、感情をコントロールできず涙がこぼれてしまう。

こんな姿を夫が見たら、また悲劇のヒロインだと言われてしまうだろうか。

あのときの私は夫に救われたが、今度こそ自分の足で立ち上がらなくてはいけない。

わかっているのに、泣くしかできない情けない自分が本当に嫌だ。

綱渡りのような妙に緊張した想いを心の奥底に抱えたまま、十二月になった。

寒さが日に日に厳しくなり、私のお腹も少しずつ膨らんでいる。

去年とはまったく違った毎日に、まだ心が追いつかない。
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