甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
いただいたものばかりだが食事の準備をしようとすると、ふたりの男性がなぜか積極的に動いて私に仕事を与えてくれない。


「沙也さんは休んでいて」


「俺がやるからいい」


「いえ、あのせっかく来て下さったのに、それにお疲れでしょうから。積もるお話もあるんじゃ」


久しぶりに再会した兄弟の邪魔をしたくない。


「いや、しょっちゅう郁には仕事関係の話も含め話しているから大丈夫だよ。身重の義妹に無理をさせたら、舞に俺が叱られる」


「そうだ、沙也は気にしなくていい」


ふたりは当たり前のように返答する。

とはいえ、来訪された客人を尻目に自分だけ休ませてもらうのはどうにも忍びないし、やはり兄弟水入らずで積もる話もあるのではと思う。

どうしようかと思案していたとき、インターフォンに宅配ボックスのランプが点灯しているのが見えた。


「あの、私、一階に荷物を受け取りに行ってきます」


「沙也、それは後で俺が行く」


「この間頼んだコンタクトレンズだと思うの。郵便物も確認したいから」


引き留めようとする郁さんを振り切って、スマートフォンと鍵だけを持ち、早足で玄関に向かう。

念のため、厚手のショールも羽織る。

過保護な郁さんはもしかしたら追いかけてくるかもしれない。

そう思い、急いで玄関ドアを開け、廊下に出た。
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