甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「まったくもうあなたたちは……なんでこんなにこじれているの? 郁って本命には不器用なのね、知らなかったわ」
信号で停止した際に、飯野さんがハンドルを握ったままため息を吐いた。
「散々ひっかきまわした私がどうこう言えた義理じゃないけど、あなたたちはもう少し本音で話し合うべきよ。本気でほしいものはもっと貪欲に奪いにいかなきゃ、私みたいなのに横からとられるわよ」
「でも」
「この私を歯牙にもかけず、条件なんてつけてまで郁はあなたを選んだの。もっと自信を持ちなさい。郁は自分の意に沿わない選択なんて絶対にしないわ。長年一緒にいた私が言うんだから間違いない」
再び車を発進させながら飯野さんが言い切る。
「人を好きになるのに時間は関係ないんだって私に実証してちょうだい。じゃなきゃいつまでも私がみじめでしょ」
わざと挑発的な物言いをする飯野さんの心遣いが胸に刺さる。
ずっと片想いをしていた相手の、曲がりなりにも妻に、これほど親身になって親切にしてくれる彼女に、本当に敵わないと頭が下がる。
flowerに着くやいなや、心配そうな様子の風間さんに迎えられた。
「なんで飯野と沙也ちゃんが一緒なんだよ」
「昨日の敵は今日の友って言うでしょ」
風間さんは訝しみながらも、私たちを個室に案内してくれた。
今日、義兄が自宅に来ていると知っているはずなのに、風間さんは私がここにいる事情をなにも尋ねなかった。
それどころか温かなレモネードまで用意してくれた。
信号で停止した際に、飯野さんがハンドルを握ったままため息を吐いた。
「散々ひっかきまわした私がどうこう言えた義理じゃないけど、あなたたちはもう少し本音で話し合うべきよ。本気でほしいものはもっと貪欲に奪いにいかなきゃ、私みたいなのに横からとられるわよ」
「でも」
「この私を歯牙にもかけず、条件なんてつけてまで郁はあなたを選んだの。もっと自信を持ちなさい。郁は自分の意に沿わない選択なんて絶対にしないわ。長年一緒にいた私が言うんだから間違いない」
再び車を発進させながら飯野さんが言い切る。
「人を好きになるのに時間は関係ないんだって私に実証してちょうだい。じゃなきゃいつまでも私がみじめでしょ」
わざと挑発的な物言いをする飯野さんの心遣いが胸に刺さる。
ずっと片想いをしていた相手の、曲がりなりにも妻に、これほど親身になって親切にしてくれる彼女に、本当に敵わないと頭が下がる。
flowerに着くやいなや、心配そうな様子の風間さんに迎えられた。
「なんで飯野と沙也ちゃんが一緒なんだよ」
「昨日の敵は今日の友って言うでしょ」
風間さんは訝しみながらも、私たちを個室に案内してくれた。
今日、義兄が自宅に来ていると知っているはずなのに、風間さんは私がここにいる事情をなにも尋ねなかった。
それどころか温かなレモネードまで用意してくれた。